「女子アナみたいな女の子が好きな人はいいねしないでください」

これは、私が約5年間マッチングアプリ(※以下アプリ)をやっていて編み出した渾身の自己紹介だった。

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私は「フリルスカート」よりも「デニムサロペット」、「韓国ドラマをみてキュンキュンする」よりも「深夜ラジオを聴いて爆笑する」、「休日はおしゃれなカフェで友達とおしゃべりする」よりも「一人で昔ながらのサウナ付き銭湯に行ってととのう」のが好きな26歳こうやって羅列したワードたちから察していただけると思うが、私は男性ウケするような女性とは程遠い女で、男性に異性として見られるという機会が少ない人生を送ってきた。

ただそんな私でも恋人が欲しいと思ってしまい、アプリを始め、そのままだらだら続けていた。

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マッチしてデートした人の人数はかなり多かったと思う。
プロフィール画像は、たまに着る女性らしいスカートを履いて笑顔で映っている自分の写真を選んで、自己紹介文は、「休日はカフェ巡りをしたり、NETFLIXでドラマを見たりして過ごしてます!」 と、いかに男性ウケをするか考えて入力していたからだと思う。

しかし実際会って会話をするとやはり本当の自分が出てしまいそのうち女として見られなくなってしまうのか、いいなと思った男性とは自然消滅してしまうのであった。

そんなことなら最初から自分らしさを前面に出しても敬遠しない人を探したほうがいいのでは?と思い、冒頭の自己紹介をプロフィールに記載した。

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しかしその直後にマッチしてデートした男性から、「正直あのプロフィールはやめたほうがいい、あのままじゃ過去に何かがあった、いわくつき女だと思われちゃうよ」と言われた。

自分の自己紹介文は意図していない形で受け取られてしまっていて、無性に恥ずかしくなった。

確かに少しやりすぎかなと思いつつも、やっぱり納得できなかった。
「男ウケするような女の子らしさ」でコーティングされた自分をみて気になってくれた人とデートをして、そのコーティングが剥がれたら、やっぱ違うかもって思われて疎遠になってしまうことが。だったら最初からマッチするなよ、無駄な時間過ごしたじゃんって思ってしまうのだ。

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しかしそれと同時思った。

効率よく恋人を作ろうとするなんて間違っているのではないか。

アプリで結婚して幸せになったおおよその人は、恐らく私よりもずっと多くの人とデートを重ねて、嫌な思いもたくさんしてきたのだろう。人生の伴侶というのはそういった経験を経てやっとの思いで出会うのではないか。
効率的に恋人を作ろうなんてとてもおこがましいことなのでは...…。

そこで自分に問いかける。「じゃあそこまでして恋人欲しいの?」
答えは、いいえ。だ。

アプリで恋人ができた人を羨ましいとは思うものの、やっぱりどうしても自分を偽ってまで「恋活」をしたくなかった。最初から本当の自分を見て、いいなと思ってくれた人と付き合いたい。
私は、アプリというのは性質上プロフィールから得られる第1印象を100点満点として、そこから会話やデートを通じて点数を下げなかった人が優勝する(=恋人に選ばれる)減点方式だと思っている(もちろん男女共通である)。そんな通常の人付き合いと比べてちょっと特殊なやり取りの中で精神をすり減らしてまで恋人が欲しいとはどうしても思えない。

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それ以降アプリはやっていない。
そこまでして恋人がほしいと思ったときに再開するんだろうけど、多分だいぶ先になるだろう。