揺れてる気がする。
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)が出されたあの日から取り下げられるまでの1週間、毎晩満足な睡眠がひとつも取れずにいた。

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どうやって災害から逃れるか、考えても考えてもベストな策が見当たらない。どう頑張っても、最終的には運命に委ねるしかないように思う。このような恐ろしいことがあろうか。
関西圏に住まうわたしは恐怖に抱きしめられて身動きが取れなかったのだ。
せっかく瞼がすとんと落ちて、意識がふっと上に登っていきそうな感覚がしても、揺れている気がするのでバチコーン!と目開き意識強制的に戻った。

大地震がくるかもしれない。
居ても立ってもいられない。充電器に繋がれまままバッテリー100パーセントを保ち、わたしに触られるがままスマホはTwitterを開いた。

地震と検索すると、同じ時刻に「なんだかずっと揺れてるかんじする、なんだこれ?」だとか、「今日小さい地震ずっと起こってないか?」など投稿している人がチラホラいた。私もです!と強い同意を示す為、片っ端からいいねを押して回った。地震雲とかいう、大地震の前触れに現れるという雲の画像も目に入ってきた(のちになんの根拠もないデマだとわかった)わたしは地震雲とやらによく似た雲を朝方見た。わたしは怖すぎて指先がガタガタプルプル震えてスマホの画面をうまくタップできなかった(ただの飛行機雲だ。滑稽とはまさにこのことです)

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そういえば、最近近所の公園でハトやスズメを一羽も見かけていない!これは地震前の動物の異常行動に当てはまるかもしれない(公園の池ではカモが気持ちよさそうに泳いだりリラックスしていた)本当に生きた心地がしなかった。わたしはなにがなんでも生き残って幸せに人生をまっとうしてみせるぞ!と不屈の魂を輝かせてみせた。

夕方リュックに詰めた防災グッズも今一度確認する。水道水をギリギリまでそそいだ2リットル程の大きな水筒3本が重くて、リュックを背負って逃げる最中後ろにひっくり返って起き上がれなくなり手足をジタバタさせて泣きじゃくる自分を容易くイメージ出来てしまった。

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そうこうしている間に夜は明ける。
カラスの間延びした、低いのか高いのかよくわからない鳴き声や、ヒヨドリのピェーピェーとせわしない鳴き声がよく響き聞こえ出した。
薄明るくなってきた空がカーテンの隙間から覗いていた。

とうとう朝が来て、日の光が雲をうつくしく照らし、空がアートのように彩られる。それを眼球に映し、口を半開きにして、寝不足故の空っぽのあまり機能してない脳みそで「地震が来なくてヨカッター」と考える。そして新しい1日の始まりに、今日はどうかわからないぞと身構える。

求職中の無職の身なので、眠らなければという焦りがなかった。好きなだけ恐れていられた。

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)が取り下げられるまで、このルーティンは繰り返された。