石の上にも三年という言葉がありますが、学生生活の長かった私も社会人3年目の年を迎え、新たな門出に立とうとしています。

普通の人とは少し異なる性質、いわゆる発達障害を持った私にとって、この3年間は今までの人生で最も自分自身が分かった時間となりました。同じ性質を持つ一人でも多くの方の支えになる言葉を伝えることができればと思い、ここに筆を執ることを決意いたしました。

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最初に自己紹介をすると、私は27歳まで文系の大学院生をしておりました。その頃の私はマイペースに自己完遂。学部、大学院合わせて269単位取得し、両親から与えられた恵まれた環境を生かして人間科学全般を学びました。

学術に未練はありませんが、それは決して私が器用で何でもこなす人間だからではなく、両親が全くアルバイトをせずに研究に専念できる環境を整えてくれたことによるものです。私は一般的な大卒者よりも社会に出るのが6年遅かったですが、後悔なく社会に出ることができました。

社会人になることは、多くの人にとって新たな門出であります。しかし、ここに私のような発達の凸凹を抱えてしまうと、それが大きな障壁となります。なぜなら、社会人となって覚えることの多くが、学生時代には発見されないことだからです。

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私が最初に配属されたのは、窓口業務でした。そこでは自分の仕事をしながら窓口対応を行います。このように、複数の業務を同時にこなすことをマルチタスクと言いますが、これが私にとって最大の難問でした。

資料を綴っている際にお客さんが来ると、その作業を中断して対応を行います。無事に業務が終了すると、本来であれば前の業務に戻るところを、私は誤って机に戻ってしまいました。それまでの業務の存在を忘れてしまったのです。

そしてお客さんが沢山来る時は尚更大変です。なぜなら、お客さんの数に圧倒され、冷静になることができないこと、複数に跨がる種類の業務を複数件こなさなければならず、ミスを誘う機会が増えるからです。

私たちの部署には繁忙期があり、その時期にはお金を払いに私の事務所に人が殺到します。そうすると、他の人を待たせてはいけないと冷静になることができず、レジがまともに使えず、誤った取扱をしそうになってしまいます。この件について反省しているとそのことで頭が一杯になります。お金の取りまとめを行っている際にお客さんが来たら、そのお金はどちらに含めるべきなのかとこれまたパニック発生です。

流石に5ヶ月ほどその部署にいたことから自分のしたことの罪深さを実感しており、その後は何もできなくなっていまいました。土日も心が休まず寝たきりとなり、ストレスで手に湿疹ができてしまいました。

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上述した状況は誰にとっても良いことはなく、本採用に切り替わるタイミングで部署異動をすることになりました。その後はマルチタスクの求められるものはなくなり、冷静に仕事に取り組むことができるようになりました。

ですがやはり小さなミスを起こしやすいというのは共通しているようで、中々直りませんでした。前のような大きなミスに繋がることはなくなりましたが、やはり私ができないところを周囲の人が補う体制は依然として残ったままでした。

その他にも、電話対応や突然の来客応対といった突発的に起こる内容への対処は難しく、社会人になって3年が経とうとしている現在も未だに直っておりません。

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一方、仕事できない三昧の私にも得意とするものがいくつかありました。それは、文書の作成と講師です。これらはじっくりと時間をかけて行うことができます。また、事前に用意されている教材の弱点を見つけることや、意見交換を通して周囲と自分の差異に気付けることが分かりました。

これらは、言語性IQが高めの私に見合った仕事でした。ですが、我々の仕事に求められるのは実務者としての仕事であり、ジェネラリストであることが求められます。つまり、発達に凸凹のある私には向いている仕事ではありません。なので、この仕事を継続できるのかという不安がつきまといました。

けれども、この3年間は決して無駄でったとは思いません。なぜなら、新入社員の時に自分について全くの分からずじまいだったのが、3年間働いたことによってできることとできないこととの区別が自分の中でできるようになったからです。

今までの人生の中で、最も大きな気付きのあった3年間になったと思います。この段階は、発達障害を持つ我々には大切な過程であることにも気付くことができました。なので、もし機会があれば他の当事者の方々にこのようなお話ができればと思っております。

来年、私は初めての異動を経験する可能性があります。仕事の出来は周囲の方と比べて十分ではありませんでしたが、悲観的にならず、新たな地で勢力を発揮していきたいと思います。