今まで約20カ国・地域を訪れたことのある私にとって、韓国は私にとって特別な国だ。
初めて踏みしめた異国の地なのだ。
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高校時代、修学旅行の行き先が韓国だった。日本とは異なる文化や土地の空気感、聞き馴染みのない言語で交わされる会話に、私は終始ドキドキとワクワクでいっぱいだった。
景福宮の周辺を散策していた時、2、3歳くらい年下の少女に日本語で声をかけられた。日本語を勉強中のようで、日本が好きだと伝えてくれた。日本語で会話を交わす中、言いたい日本語が浮かばなかったのか、少女が言葉につまった。彼女の言葉の意図を汲み取った私は、英語で聞き返した。すると彼女は「そうそう!」といった表情で答えてくれ、その後は英語で話した。
語学勉強者に対して、適切な対応ではなかったかもしれない。しかし、「私にとって母国語ではない英語が外国人に伝わった」という事件に驚いた。それと同時に、嬉しくなった。少女は私に外国語でコミュニケーションを交わす喜びを教えてくれたのだ。
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数年後、大学の授業で私は再び韓国を訪れた。現地の大学や公共施設で研修を受けるプログラムで、韓国の協定校の学生が世話役をしてくれた。大学院生のEさんと同い年のSちゃん。
Eさんはお人形のようなふわふわした可愛い人で、現地の後輩学生のように面倒を見てくれた。日本語がとても上手で、多くの日本人が苦手な納豆が好物だと聞いた時は驚いた。研修の合間には彼女の故郷である釜山を案内してくれた。色とりどりの建物が建ち並ぶ甘川文化村でたくさん一緒に写真を撮り、お揃いのヘアピンをくれた。
Sちゃんは人懐っこくて、研修が始まったばかりで不安だった私の緊張を解いてくれた人だ。彼女も日本語が堪能で、研修中は韓国語の説明を日本語に訳してくれた。こちらも研修の合間にたくさん一緒に写真を撮り、美味しい韓国グルメを楽しんだ。同い年ということもあり、授業のことや進路のことなど、真面目な話も途切れなかった。私が日本に帰ってからも、エアメールを送ってくれた。
韓国研修中、アカデミックな側面で学びが多かったのはもちろんだが、現地の学生と深く交流できたことがとても嬉しかった。特にEさんとSちゃん、この2人には本当にお世話になった。一緒に過ごす時間があまりにも楽しくて、帰国する時は少し泣きそうになった。彼女たちからもらったヘアピンやエアメールは、今でも宝物ボックスに大切に保管している。
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しかし、彼女たちとは研修以降、連絡を取り合っていない。もともと人付き合いが苦手だった私は、自ら連絡を取るのが恥ずかしく、帰国後も連絡を取り合うという発想もあまりなかった。
コロナが世界的に猛威を振るっていた頃、ふと2人のことを思い出した。この状況下で、彼女は健康に過ごせているだろうか。それがあまりにも気になり、ようやく連絡しようと決意した。まずレスポンスが早いSちゃんにLINEした。その後にEさんにもLINEしようと思った。しかし、Sちゃんから返事は来ない。既読にすらなっていない。Sちゃんから返事がないから、Eさんにも連絡できない。それをずるずる引きずって、現在に至る。
なぜ、研修後にすぐ連絡をとらなかったのだろうと後悔している。「無事帰国した」の一言だけでも送ることができたら、交流はもっと続いたかもしれないのに。研修時から数年経った現在、彼女たちは元気なのか、どんな道を歩んでいるのか。今更になって余計気になる。
私は当時よりも韓国が好きになったよ。K-POPもよく聴くし、韓国ファッションやコスメもよくチェックしてる。2人が薦めてくれたコスメブランドが今でも1番のお気に入りだよ。
この前、一人旅で韓国に行ったんだ。世界遺産を見て感動して、韓国の歴史をもっと知りたいって思った。
2人にこんなことを伝えたかった。
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修学旅行で出会った少女も、研修でお世話になった2人の学生も、一期一会の出会いだった。だから、もう一度はない。あったとしても、自分でもう一度をなしにしてしまった。
自分を顧みる時、私の記憶の中に彼女たちは今もずっと存在しているし、きっとこれからも忘れない。素敵なたくさんの思い出を、ありがとう。