小学生の頃から少女漫画に夢中だった私。甘く切ない恋愛物語に憧れ、いつか自分もそんな恋をしてみたいと夢見ていた。中学から大学までは女子校生活を送り、社会人になってからも女性ばかりの職場で、男性と接する機会がほとんどなかった。私の理想の恋愛はどんどん膨らむばかりで、少女漫画のようにある日突然運命的な出会いが訪れる――自分好みのイケメンがどこからか現れると信じていた。だが、現実はそう甘くない。

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年月が流れ、現実を見なければならない年齢に差し掛かると、焦りを感じるようになった。友人たちが次々と結婚していく姿を見て、自分にも運命の相手が現れないのかと不安になった。そして、「私はB専だからイケメンなんて怖い」などと強がっていたが、ただ待つだけではダメだと気づいた。

勇気を振り絞り、マッチングアプリを始めた。初対面の人と会うのは怖かったが、積極的にメッセージを送ってくれたRさんという男性に興味を持ち、会ってみることに決めた。電話で話すと、彼の優しい声と穏やかな話し方に心がほぐれた。一時間ほどの会話で、家庭環境や価値観が似ていることがわかり、自然と笑顔になった。もしかしたら、彼との出会いが運命の始まりかもしれないと思い始めた。

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マッチングアプリで見たRさんのプロフィール写真は後ろ姿だけだったが、どこかイケメン風だった。心の中でドキドキしつつも、「写真は加工されているかもしれない」と自分に言い聞かせた。イケメンならマッチングアプリを使うはずがない、遊び目的に違いないと決めつけ、心を冷静に保つことにした。

待ち合わせの時間が近づくにつれて、緊張が高まってきた。心臓がバクバクし、手汗がにじむ。もしイケメン風のRさんが現れたら失礼な態度を取ってしまうかもしれないと心配になり、最悪のシナリオを考えて気を紛らわせた。「彼が全身ジャージ姿で現れても笑顔で対応しよう」と、自分に言い聞かせながら待ち合わせ場所へ向かった。

待ち合わせ場所でキョロキョロしていると、身長の高いすらっとした男性と目が合った。彼の反応は薄かったが、無言でこちらに近づいてきた。これがRさんだと直感でわかった。マスクをしていて顔は見えなかったが、背格好からしてイケメンの予感がした。

彼は私より年上なだけあって、落ち着いた雰囲気をまとい、クールな印象だった。それでいて、少し気の抜けたラフさもあり、絶妙にバランスが取れていた。少女漫画でよく見かける脱力系のクールキャラに心を奪われる私には、初対面から好印象だった。

しかし、もし本当にイケメンだったら遊ばれる確率が高まると思い、不安が押し寄せてきた。「彼のマスクの下は、微妙だろう!」と信じることで、心の平静を保とうとした。職場で「マスク詐欺」として有名な上司を思い出し、「Rさんもそうに違いない」と思い込むことで、緊張を和らげようとした。

それでも、Rさんが自分好みの性格であることがわかるたびに、緊張が高まるばかり。彼が私に熱い視線を送っている気がして、距離もどんどん近づいてきた。「これで顔までイケメンだったら遊びに違いない」と絶望感が増し、どうしようかと葛藤していた。

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少し歩いたところで、彼がカフェに入ろうと提案してきた。そのカフェは、まるで私の好みをすべて把握しているかのように、雰囲気もメニューも完璧だった。「もしかして、事前に私のことをリサーチしてくれたの?」と疑うほど。彼の店選びは、私の心をつかんでしまった。

カフェに入り、落ち着いた雰囲気の中で彼と話していると、自然と私の家族の話になった。父親が仕事で忙しく、子どもの頃はあまり一緒に過ごす時間がなかったことを打ち明けると、彼は少し間をおいて、「それって……何かしら影響がありそうだね」とクールに呟いた。その言葉のトーンや瞳には、どこか温かさがあった。

その瞬間、彼が私の心の深い部分を見抜いているような気がして、初対面のはずの彼がとても身近に感じられた。不思議な安心感に包まれ、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。彼の穏やかな声と優しい目つきに、気づけば私の心はすっかり彼の存在に引き込まれていた。

ふと彼がマスクに手をかけた瞬間、私の心臓は早鐘を打ち始めた。これは大事な瞬間だと心の準備を整え、覚悟を決めた。そして、マスクを外した瞬間、自分の目を一瞬疑った。そこには、まぎれもなく自分好みのイケメンが、まるで映画のワンシーンのように、コーヒーを飲んでいた。

「見間違い?」と内心パニックになりながらも、どう見ても彼はイケメンだった。ニヤケを必死に抑え込みながら、声がいつもより高くなっているのを感じた。「ああ……彼になら遊ばれても、まあ仕方ないかも……」と、妙に納得してしまった。

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その後、彼は予想外に誠実で、私に真剣に向き合ってくれた。彼の優しさや気遣いに触れるたび、私の心はどんどん彼に惹かれていく。彼の笑顔を見るたびに、胸がキュンと締め付けられるような感覚に襲われ、気づけば彼のことを考える時間が増えていった。

「これから彼は、私を何千回、何万回キュンとさせてくれるんだろう…」そんなことを考えただけで、これからの時間が楽しみで仕方がなくなった。彼との毎日は、まるで少女漫画の主人公になったように、キラキラと輝き続けるんだろうなと、ちょっと甘い期待を抱きながら、私は彼の隣にいる自分が少しずつ好きになっていくのを感じた。