今年の7月で29歳になった。つまり、次の誕生日を迎えるまでのこの1年が20代ラストイヤーということになる。

来年の誕生日もまた今まで通り数字がひとつ増えていくだけなのかもしれないけれど、「29→30」はやっぱりどこか様子が違うように思える。1の位だけじゃなく、10の位の数字まで変わってしまうからだろうか。とても、大事(おおごと)のような気がしてならない。後ろを振り返っても別に誰もいないのに何かに追われているような感覚に陥りそうだし、どこから湧いてきたのかわからない身元不明焦りもふつふつとうごめいている。

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30歳なんてまだまだ先だと思っていた。ところがどっこい、もう視界の隅に姿を現し始めている。きっとその姿はこれからどんどん大きくなってくるんだろう。あっという間に目の前に迫ってくるんだろう。「ちょっと待って」と制する間もなく、そいつがぬるっと覆い被さってくる未来が見える。

「もうちょっとちゃんとしたい」が、残り1年を切っている20代に対する私の最大のタスクだ。我ながら、何ともフワッとしたタスクだこと。こういうフワフワしている所も「ちゃんとしていない」にあたるのだと思う。

自分の輪郭が曖昧なまま、29歳まで歩いてきてしまった。輪郭がちょっと濃くなって「よかった」と安堵してもすぐにまた薄くなって、の繰り返し。ブレブレな自分に何度嫌気を差したかわからない。自分で自分をコントロールできないなんて、そんなの大人として恥ずかしい。そういった恥ずかしさや苦しさをここ半年くらいは特に感じる場面が多くて、正直日々がしんどくてしんどくて仕方なかった。

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けれど、どんなにしんどかったとしても、1日1日は淡々と過ぎていく。20代でいられる時間は、一定のリズムで目減りしていく。

「もうちょっとちゃんとしたい」のタスククリアを目指すには、自分の考えていることや感じていることを日々整理する必要があると思っている。ありていに言えば、たとえば日記。自分の内側にとどめるだけではなく外側にも放ちたいのなら、SNSの類でもいい。どちらもちょっと前まではやっていたけれど、いつの間にかずいぶん疎遠になってしまった。飽き性な性分が理由なのかもしれないけれど、これは都合のいい言い訳なのかもしれない。

自分の考えていることや感じていることに、私はしっかり鈍くなってしまっている。私はすぐ、自分のことも、過ぎていく時間のこともおざなりにしてしまう。

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そんな私でも、自分の中身や自分を取り巻く物々と向き合おうと思える場所が1つある。それがここ、「かがみよかがみ」だ。ただ、投稿できるのは原則29歳までと定められている。かがみすとライフもまた、残り1年を切っていることになる。

おととしの12月から投稿し始めたから、かがみすと歴はそんなに長くない。ただ、飽き性人間が飽きることなく、現時点で90作以上エッセイをコンスタントに投稿し続けられているのは褒めてやってもいいのかもしれない。何かというとぐずぐず卑下することが多い日々だけれど、たまには自分を褒めたいときだってある。じゃなきゃ人生やってられない。

初めて「かがみよかがみ」にアクセスし、先輩かがみすとさん達のエッセイをいくつか読んだとき、「私にはムリだ」とはっきり思ったことをよく覚えている。自分の考えていることや感じていることを、こんなに豊かな表現で書くことなんて私にはできない。いやに説明的で、カチコチした文章になるであろうことが容易に想像できた。そもそも私はエッセイに昇華できるようなエピソードをそんなに持ってないな、ほんとつまんない人間だな私は、とお得意の自己嫌悪パレードが脳内で始まった。

とはいえ、書くことそのものは昔から好きだったし、興味本位で「えいや」と書いてみた。一度書き出したら、何でだか止まらなくなった。基本的に自分のことが嫌いだから自分の内面に潜っていく作業も避けがちなはずなのに、かがみよかがみ用のエッセイを書いているときだけは苦じゃなかった。内容によってはしんどくなることもあったけれど、かさぶたを剥がすときのような痛みと快感が同時に感じられた。

たくさん書けばいいってもんじゃない。「量より質」という言葉はもちろん知っている。ただ、「継続は力なり」という言葉もまた知っている。辞めずに続けていることがひとつでもあると、案外それが自分に力を与えてくれたりする。どんなに小さなことでも。

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20代でしたいこと。「もうちょっとちゃんとしたい」とかいうフワフワしたものではなく、もっと明確な言葉で1つ宣言するならば、「「かがみよかがみ」でエッセイを120作以上書いて卒業する」にしようか。120は、30歳までの残り日数と投稿ペースを加味してざっと計算した数字だ。目標は数値化すると良いというのを何かで見た。ひっそりこっそり、ここに掲げてみる。

何にせよ、「バイバイ、20代!」と晴々しい気持ちで30代を迎えたいところだ。