もう十年以上前のドラマ「たったひとつの恋」の舞台である、横浜。北川悦吏子作品をこよなく愛する私にとって、横浜はとても好きな街なのだ。きっと横浜は、北川先生が恋愛物語を紡ぐ場所にぴったりだと、思いをめぐらせたはず。
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そんな街に私もドラマの聖地旅として、訪れたことがある。もう十年ほど前のことになるが、懐かしくもあり、また必ず訪れてみたい、という意気込みを投影するような街である。
たったひとつの恋の主人公、弘人は家業である造船所の後を継ぎ、ぜんそくの弟を懸命に守るために、働いている、という設定だった。その弘人が切り盛りする造船場は、実際に横浜の中心部から離れたところであるが、造船所として、ドラマに登場したそのままの姿があった。どうしてもその造船所に訪れたかった私は、当時中学生になったばかりだったため、家族に連れて行ってもらった。和歌山県からはるばる横浜まで、なんと家族を巻き込んでまで。壮大なドラマ聖地巡りだったが、ちゃんと実際に訪れてみると、横浜の空気はなんだか都会の騒々しいものではなく、都会の美しさと上品な雰囲気に包まれていて、時間がゆったりと過ぎていた。
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横浜の街が、こんなにも美しいと知ったのは、やはり北川作品のおかげである。私にとって北川悦吏子先生は、やはり今も変わらず師匠である。二十歳そこそこの若者の恋物語を、ぎゅっと詰め込むだけではなく、丁寧にじっくりと二十歳が感じる、葛藤と、将来への期待、そして淡くも泣き叫びたいほど美しく切ない恋。そんな感情を、横浜の街にずっしりと響き渡らせる、という創造は、北川先生にしか実現できないと私は思う。もちろん横浜も、登場人物も、それぞれがドラマのなかで抱く感情も、ぜんぶ目が離せなくなって、気づけば私は横浜の街にまで導かれていったのだ。だからこそ、横浜の街にいると、特別に光っていて、寂しさも、悲しさも、恋も愛も、ぜんぶが美しく見えてくる。魔女がいる街なのかもしれない、と考えさせるくらい、美しくて切ない。私はそんな街が愛おしく思えるし、また横浜の街に呼ばれてみたいのだ。
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もちろん中華街だって、横浜のシンボルだし、赤レンガ倉庫も、とっても素敵だった。ここで毎日生きている人、一人ひとりにドラマがあって、それを懸命に紡いでいるのだなあ、と街を歩いている人々を見て、私はしみじみと感じていた。そう感じてしまうほど、やはり横浜には吸い寄せられる景色が、ずらりと並んでいるのだ。まるで魔法のような世界でもあった。横浜に訪れるまでは、魔法のような世界なんて、ディズニーランドでしか夢見ることのないと疑うこともなかったのに、横浜はさりげない魔法がかかっているように思えた。観覧車から一望できる静かで美しい夜景、真昼の造船所から見える日常の街、カップルや家族連れが颯爽と行き交う赤レンガ倉庫。これらは一見、なんともない横浜の日常の風景であるかもしれないけれど、私には何度見ても魔法がかかったような特別な景色に映って、なんだか落ち着かなかったのである。
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そして東京も、ほんとうに素敵という一言だけでは足りないくらい、立派な街である。東京タワーなんて、恋だの愛だの、会いたいなど、人々の心苦しいほど真っすぐな感情をマルッと優しく包み込んでくれそうで、私はなんとも言えない美しさを感じているのだ。中学の修学旅行と家族旅行で訪れて以来、東京タワーには特別な感情を抱くようになった。というのも強引かもしれないが、私にとって一度訪れると強い愛着が湧いてしまうのが東京タワーなのだといえる。そう考えると、やはり都会は人々に影響を与える街に違いないのだと思い知らされる。
またいつか、いや、必ず、横浜にも東京にも呼び寄せられたいものだ。