私は今、女の子を妊娠している。10年前の私に知らせたら「嘘でしょ!?」と信じてくれないだろう。この10年で私の生活は一変した。海外へ移住し、常識も塗り替えられ、新しい価値観の中で生きている。

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1年半の海外留学を経て、某コンサルティング会社で派遣社員として働いたことがあった。入社研修では4大卒じゃないのは私だけで、学歴も意識も高い人たちが多く働く場所なんだ、となんだかワクワクしたのを覚えている。

しかし、ふと目にしたものに大きな衝撃を受けた。

「汚物」である。

最近ではサニタリーボックスなどとも呼ばれるが、そのビルのトイレにはしっかりと漢字で「汚物」と書かれていた。その会社が用意したものではないかもしれないけど、外資系の会社が名を連ねるそのビルでの出会いに、余計に面食らった。

4年前、妊娠中の私に姉や友達から心優しい連絡がくるたびに、「なんだこれ?」と思った記憶がある。

「悪阻(つわり)」

さらに、産後に体内から出てくるものは「悪露(おろ)」と呼ばれる。

どうしてこれに驚いたかというと、私が妊娠期間を海外で過ごしていたからだと思う。妊娠・出産にまつわる言葉は、留学時代には聞き慣れないものが多かったけど日本語のような違和感を抱くことはなかった。

英語では「汚物」を「Sanitary(サニタリー)」衛生的な、清潔なという言葉が使われる。「悪阻」は「Morning Sickness(モーニング シックネス)」、「悪露」は「Postnatal Vaginal Discharge(ポスネィタル バジャイナル ディスチャージ)」直訳すると、出産後の膣から出てきたものが使われる。

どうして日本では、この漢字が使われているのだろうか?これらの言葉から、差別的な気持ちを受けるのは私だけだろうか。

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私たちは日常に使う言葉から、知らず知らずのうちに意味や価値観を受け取っている。私がこれらの漢字を見たときに「なんかすごく嫌な感じがする」と思ったように、無意識の中でもイメージが頭に浮かぶことは多い。

また、私が小学校で生理について学んだ際は男女別で行われ、こそこそと隠れてトイレにいく方法を学んだ。もちろん、なんでもあけすけにすればいいというものではないと思うけど、「男性に知られてはいけないこと」のような印象は植え付けられたと思う。

今の私は、これらの女性特有のものが、なんだかとっても汚くて悪いもののように扱われていることに非常に違和感を覚える。だって、本当に汚くって悪いものなのだろうか?

そんなはずはない。女性にまつわるこれらの名称や現象を、美化して欲しいわけでも卑下して欲しいわけでもなく、ただその事実を表す言葉であって欲しいと願う。

今から漢字を総取り替えするのは無理があるかもしれないけど、自分が使う言葉には十分に気をつけていきたい。

初めて生理になったとき、「汚いもの」と意識するのではなく、自分の体の「衛生を保つもの」と理解するのは大きな差が生まれると思うから。この小さな積み重ねで、必要のない「女性特有の現象は隠すもの、汚いもの」などの刷り込みは絶対に残したくない。

10年あれば、人は変われる。私はそれを体験したからこそ、思いが強い方へと進んでいけると信じている。そして一人ひとりの力は小さいかもしれないけど、一人ひとりが変化しはじめることで、世の中の価値観もきっと変えていける。

10年後の女の子が「女性特有の現象は隠すもの、汚いもの」という価値観ではなく、女性としての自分を正常に受け止められる世界になって欲しい。