10年後と言えば2034年。世の中は恐らくめちゃくちゃハイテクになっていて、めちゃくちゃ少子高齢化&食糧危機&地球温暖化という、言ってしまえば住みやすさと生きづらさが今より表裏一体になっているだろう。私も無事に生きながらえていれば32歳である。

私はフェミニズムについて深く考えたことはないし、女がどうとか男がどうとか性別での生きづらさを感じたこともあまりない。世の中に貢献していることはほぼほぼ無いに等しいのだが、これだけは言っておきたいと思ったことを男性にぶちまけたことが一度だけある。

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2023年5月9日に当サイトに掲載していただいたエッセイに関する話なのだが、私はマッチングアプリで出会った男性以降Aにホストクラブに連れて行かれそうになったことがある。執筆においては話を端折ったのだが、その時の私は相手にこれ以上ない苛立ちを抱えていて、珍しく喧嘩と言える喧嘩をした。

Aは私を自分が働いているホストクラブに連れて行くのに必死だった。しかし、「呑みに行こう」という誘いで来ている私からすれば、行き先がホストなんて解釈違いにも程がある。こっちも必死で抵抗した。

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その口論の中でAは「別に変なお店じゃないよ」と訴えていた。そりゃそうだろう、ホストだって立派な職業である。しかし、私は一人である。女一人、マッチングアプリで出会ったまだよく素性も知らない男に同伴でホストクラブに行くなんて、リスクとハードルが高すぎる。しかも初めてのホストクラブ。女一人、もう一度言う、女一人!無理すぎ!

思ったことをその場で勢いに任せて言いたかったが、場所は新宿のやよい軒で、周りは親子もいたし仕事帰りのサラリーマンもいた。こんなところで痴話喧嘩的なことはさすがに惨めすぎる。私は努めて冷静に反論した。

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「変なお店かどうかは疑ってないんだよ。私言ったよね?いつか女友だちと行きたいって。それを無視して勝手に自分の店に連れて行こうとしてるのはおかしいんじゃない?」
「勘違いしたのはそっちじゃん」
「『呑みに行こう』で誰がホストクラブに行くなんて思うか!」

冷静さを失い大失敗。やよい軒で痴話喧嘩をする惨めな男女の出来上がりである。
それから数十分、口論に口論を重ねるも、一向に理解してくれないAに思わずため息が漏れたとき、相手もため息を漏らしつつ嘆いた。

「何がそんなに嫌なの?」

そこで理解する。ああ、彼は女性の気持ちがまったく分からないのだ。普通に生きている女性が、普段何に価値を見出して、何に怯えているのか。声のトーンを落として諭した。

「マッチングアプリで出会った女性との待ち合わせを夜の新宿に指定する時点で配慮が足りないと思う。よく知らない男性と夜に会うってだけでも怯えるのに、歌舞伎町に近い場所に来るにはそれなりに勇気が要るんだよ」
「じゃあ来なきゃいいじゃん」

ごもっとも!だが、そんなことを言っていては出会えるもんも出会えないし、それを言われちゃおしまいである。

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マッチングアプリをする以上、女性はそれなりにリスクを負っていると思う。もちろん男性側にもリスクはあるだろうロマンス詐欺とか勧誘とかが、物理的な力ではどうやっても女性は勝てない。女性が男性と会うときは常に、襲われるかもしれない、という危機感を孕んでいることがAに伝わればいいと思った。多分、伝わっていないが。

男女平等を目指すと言っても、やっぱり男女で力の差がある以上は実現は難しい。そもそも何をゴールとするかも曖昧だ。
それでも誰しもが男女の違いを理解して、思いやりと優しさを持って共存していけたらいいなと思っている。