私は物心ついたときから、結婚や出産についてほとんど関心や願望がなかった。
幼い頃、自分の家族はあまり仲が良くないという印象を持っていた。何で私を産んだんだろうと思ったこともある。
メディアの情報や地元の雰囲気から、結婚や出産は人生で必須の通過儀礼だと思っていた。しかし、知識を身につけるにつれ、それらはパートナー同士の意思で行われることを知った。結婚や出産はしなくてもいいんだと思い、気持ちが楽になった。
生理が重くてつらい私は、一時的に妊娠できない体になった
また、年を重ねるにつれ、学校の授業や周囲の会話から、妊娠や出産における体の仕組みを知った。中高生だった当時の私はショックで、妊娠する行為を拒むようになった。
恋愛には興味を持っていたが、そういうお付き合いはなしの恋愛をしたいと、都合のいい考えを持つようになった。
一方、女性向けのマンガやファッション誌の性的なトピックに関心が皆無だった訳ではない。生物の本能として抗えないのだろう。
そんな中、昨年、私は一時的に妊娠できない体になった。
元々、生理が重くて悩まされていた。耐えられない生理痛や2、3日目の多出血。社会人になってからさらに酷くなった。
研修期間に生理の辛い症状が現れた時は、女性の先輩社員に相談した。ありがたいことに、私の体調に配慮してもらいながら指導してもらっていた。
しかし、研修期間が終わり、配属先が決まった。部署自体には女性社員がいるが、所属課には男性しかいなかった。
しかも、配属初日に生理が始まった。初日は生理痛に耐えることに必死。3日目の量が多い日は外回り同行で、「トイレ行きたいです」「水買いたいです」と先輩社員に言えなかった。どうか血が漏れてスーツにつかないようと祈っていた。
投薬治療で生理を止めた。性欲は低下しても快適な生活
このままだと生理のせいで仕事に支障が出ると思い、その週末に婦人科で診てもらうことにした。
診断の結果、とある子宮の病気の疑いがあり、その影響で生理が重いのだと判明した。投薬治療で改善を目指すとのことで、薬を処方してもらった。
薬は改善治療剤と呼ばれるもので、卵巣機能を抑制することで生理を止めるものだ。最初の1、2ヶ月は不正出血があったが、現在は生理が全く来ない体になった。
投薬治療を始めてから、生理のない生活に快適さを感じた。
その一方で、性欲が低下した。気になって調べたところ、一部のサイトで改善治療剤の副作用によるものと書かれていた。「ああ、なるほど」と思った。SNS広告の女性マンガのリンクを踏むこともなくなったし、ファッション誌の性事情記事はスルーしていた。
最近は友人知人の結婚・出産報告が一気に増えた。純粋に「おめでとう」と思えるし、私も嬉しく感じるのだが、自分がそちら側になることはないと思っている。
性欲低下のせいか、結婚や出産に余計関心が薄くなってしまった。
いつか結婚し、出産したいと思う日が来るかもしれないけど
次回の婦人科の診察で、子宮を検査してもらう。症状が改善されたら、投薬治療も終了するだろう。
しかし、正直なところ、投薬をやめたくない。生理のない生活に依存しているのだ。
仮に病気が完治し、出産の願望を持ったとしても、私は無理矢理でもそれを拒むだろう。
医学的に大丈夫だとしても、薬漬けにされた子宮で子どもが10ヶ月間も過ごすと考えると恐ろしい。
「人生何が起こるかわからない」と常に考えている私は、今まで無関心だった結婚をしてしまうかもしれない。それでも、妊娠は避けるつもりだ。
このエッセイを読んでいる人へ。
私の考えに共感できる人はあまりいないかもしれない。
それでも、否定しないでほしい。
「こんな考えを持つ人もいるんだ」くらいに思ってくれたら幸いだ。
私へ。
今は全くないけど、いつか結婚したい、出産したいと思う日が来るかもしれない。
しかし、子宮への投薬治療をしたという事実は変わらない。
そのことを後悔するかもしれない。
だから、後悔する準備をしておいてほしい。