「きゅん」が苦手な私にとって、君はベターな相手だった。
「ドキドキ」とか「きゅん」っていうのは、「緊張」とすごく似ていて、刺激が苦手な私からすると、避けたくなってしまう感情だ。

7年前、マッチングアプリで出会ったあなたは、初対面の時から私の目を一切見てこなかった。
「付き合ってください」って言われた時も、「私の顔見てなさそうだけど大丈夫そう?」と心配したほど、いつも視線を下の方に逸らして、静かに私の話を聞いている。
そこから、1ヶ月経っても、1年経っても、7年経った今でも、目と目を合わせて話した経験がほとんどない。

それが、私にとって、すごく「きゅん」なのだ。

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私は多分、世間とずれていることが多い。
目を合わせて会話をしてくる人が逃げたくなるくらい大嫌いだし、きゅんきゅんさせてくる相手も本当に苦手なのだ。
社交的な男は交友関係が広く、浮気しそうで信用できないし、オシャレな男とかちょっと論外すぎる。
恋愛市場で価値が高そうな男を軒並みキモいと思ってしまうひねくれ具合である。
というか、そもそも、そういう男が嫌いなんじゃなくて、世間への天邪鬼的な姿勢が自然とあるのかもしれないが、どうなのかは定かでない。

ただ、恋愛は苦手なわけじゃない。むしろ、大好きである。

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友達とのガールズトークで、よく恋愛の近況報告の話になる。

「彼とは一緒にいて特に何も起こらない」と友達に話すと、「長年付き合うとそうだよねー」と言われる。
しかし、何も起こらないのにラブラブでいられる事の尊さは、周りにひけらかさずに隠しておきたい私たちの秘密であり、まさに「きゅん」であるから、みんなには内緒だ。
そううのは、周りに話すと一気にロマンティックじゃなくなる。

変わっている私に、釣り合うくらい、変わっているであろう君が好き。
君といると、私は「おかしい人」じゃなくなる気がする。
二人の閉じた世界は、側から見たら危険かもしれないけど、とても心地よくて、ひたすらにロマンティックを感じてしまうから、無限ループの麻薬である。

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幼少期から、「正義のヒーロー」よりも「ヴィラン」が好きな子供だった。
みんなに優しく正しいヒーローよりも、自分にだけ優しいヴィランにロマンを感じてしまっていた。

妄想癖が強くて、現実と妄想の区別がついていないのかもしれないが、正直彼のためなら死ねる、と言うやつなのだ。

こんな風に、結構深くて、重くて、激しいロマンティックな恋をしているんだけど、周りから見たら「つまらない恋愛を情で何年も続けているカップル」に見られているんだろうなと思う。実際は、毎日イチャイチャラブラブしているわけだけど、それをひけらかすのは、何度も言うけどロマンティックじゃない。二人の隠された秘密であるから、さらに燃えるとうやつなのである。

「あの子はつまんない恋愛して、人生つまらなさそうだなー」ってずっと下に見ていてほしい。
その方が二人の世界をずっと壊されずに済むし、誰よりも激しい恋愛をしているのは、私たちだけが知っていればいい秘密だから。