火曜日の22時から放送している恋愛ドラマを見ると、いつもその夜はドキドキして眠れなくなる。特に最終回で、主人公のふたりの両想いが実ってハッピーエンドで幕を閉じたときは、自分のことのように幸せで眠れなくなる。

ドラマのワンシーンが夢にでてきそうで、朝になると気づけば夢見心地のまま眠っていたのだと知ると、ときめきが蘇ってくる。

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今年三月に放送された「夕暮れに、手をつなぐ」は、とっても素敵で心温まる青春ラブストーリーだった。毎回、映像が美しくて主演を務めた広瀬すずちゃんと永瀬廉君の綺麗な顔立ちが、より明るく表されていたように思う。最終回のキスシーンは、この世で一番美しいものを見て感動で涙が溢れるくらい、見惚れてしまった。

恋愛というより心が綺麗さっぱりと浄化されていくような純愛ドラマを求めている私にとって、このドラマに出逢えたことは人生の宝物ともいえる瞬間だった。少しづつお互いを知っていく中で、好きだという気持ちが芽生える時間の流れを繊細にゆっくりと描いていたのが印象的で、さすが北川先生が手掛けたドラマだなと尊敬するしかないドラマだった。

そんな北川作品に浸りながら、あのシーンは良かった。ああ、でも二人が花火を見に行く約束をしながら目を閉じて手をつないだシーンも最高だったと布団で毛布にくるまって振り返る一夜は、とても贅沢である。心のなかで北川作品に触れているとき、もっと美しいものに出逢いたくなって小さくも大きな夢が溢れていくのを感じていた。

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この時間は、ただの夜更かしではなく夢を紡ぎ出す瞬間だといえる。恋愛ドラマの輝かしい世界観を目にしたとき、今までなかった夢への発想が湧いてくる。夢の向こうには何が待っているのか胸の高まりを抑えきれないまま、目を閉じるのは贅沢すぎて幸せだ。恋愛ドラマの視聴者ではなく、その世界で生きる登場人物だと妄想を広げると、恋愛が与える夢は無限大だとも思えてきた。

22時から23時の一時間は本当にあっという間だから眠りにつく前の振り返りが、次回のシーンをより美しく彩っていきながら、感情移入しやすくなるはずだと確信している。感情移入すればするほど、心の中の妄想が止まらなくてこのまま眠るのがもったいない。恋愛ドラマのキスシーンは芸術作品の象徴であって、視聴者に夢を与えながらまるで現実だと思わせるものだと何度も感じている。

「夕暮れに、手をつなぐ」というタイトルを最終回で回収した北川先生の世界観に浸る夜は、どんな夜よりも贅沢で先生にラブコールを送りたくなるし、恋愛の神様に会いたくなる私は、やっぱりこのまま眠るのはもったいないと思った。

恋愛が生み出す夢は素晴らしく、いつの時代も輝かしい。誰かを好きになること、誰かに好きと想ってもらえる幸せが穏やかな日々を包んでいく。この美しい瞬間をドラマで見ると眠れないのも幸せな時間だといえる。

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そして、もうひとつ中学時代の部活の遠征で眠れない夜を過ごしたこともあった。夏休み中に東京まで大会に出場するために、遠征したことがあった。まだ試合に慣れていない中一だった私を気遣ってくれた先輩方が、恋バナをしてくれたのを覚えている。普段はあまり好きな人の話をしないタフな先輩の目が、キラッと光って見えた。

翌日に試合を控えていて早く眠らなければと思っていたけど、もっと恋のお話を聞きたい欲が出た私は眠らなくてもいいと思った。このまま女子トークで夜明けを迎えてみたい。だって、初めて先輩の目が輝いているのを見たから。これは眠れない日だと思って、その日はテレビをつけたまま女子トークに夢中になった。

 気づけば眠っていたけど、テレビがついたままの部屋は私たちの秘密の女子トークをそっと東京の街に沈めていったかのようだった。いつも恋愛は、眠れない夜にさせるものなのかもしれない。