鏡に聞かなくたって、自分が一番よく分かってる。
私がその気にさせて、告白してもらった。
君は振られたばかりだった。だからつけ込んだ。振られたばかりの男は引っ掛けやすいっていうどこかの投稿を読んだから。
私はやけくそだった。
好きな人がいた。君じゃない人。君よりも背が高くて、かっこよくて、頭がいい人。
好きな人は私の大好きな友達の事が好きだった。
私と好きな人と友達と君の関係は同じバイト先の同期、学年一緒。
好きな人は私たちより半年遅れて入社した、だからいつも敬語だった。
たまたま、バイトの日が被って好きになった。
引き継ぎが丁寧なところが好きだった。
ある日、引き継ぎついでに、好きな人はいないの?って聞いてみた。ほんとは薄々気が付いてたけど。
引き継がなくても同じ時間にバイト入ってる、大好きな友達が好きなんだろうなって。
秘密はなしにしようね、って誓った友達とは好きな先輩から新作のフラペチーノまでなんでも話していたから、バイト先の話になった時よく好きな人が話に出ていた。
やけくそだった私は、君に車で送ってもらって・・・
ふたりとも大好きだから分かってたよ。
でも、改めて私の大好きな笑顔で言われるとしんどい。
LINEしてても、話してても、友達の事ばかり。
知ってるよ、私も友達の事大好きだもん。
でも同じぐらい、好きなんだよ。
友達と好きな人がくっつけばいい。
半ばヤケクソで、運転手の君と友達と好きな人をイルミネーションに誘った。
幸せになりなよ。
近所の2人を駅で下ろして、私の大好きな友達のことちゃんと家まで送っていけよ、と脅し付きで2人を見送る。
何も知らない運転手の君が、帰り送っていこうか?って言った。
やけくそだったから送ってもらった。
帰り道は、上司も同期も先輩も後輩もみんなが知ってる最近君が振られた話を聞かされる。興味なんかない。
ああでもどこかで読んだな。振られたばかりの男は落としやすい。
恋の悩みは恋で消せ。
ちょうどいいんじゃない。って思ったら口をついてでた。
そんなやつ、忘れちゃいなよ。君とっても素敵なんだからさ、花束なんか貰ったら好きになっちゃうかもよ。
言った瞬間、冗談でもそういうこと言わないのってたしなめられる。
私の事何も知らないくせに。
投げやりな気持ちで迎えに来てもらって、やけくそでOKした
次の日、バイトの帰り迎えに行っていい?って連絡が来た。
めんどくさいからおっけーした。
好きな人にはからかわれた。
もっとめんどくさくなった。
投げやりな気持ちで、連日迎えが来た。
すっかり私の家を覚えた君は遊びに行かない?って連絡してきた。
4人で?って聞くと2人でって来た。
めんどくさかったけど、OKした。
好きな人が、からかってくるけど全てがめんどくさかった。
面倒くさがったバチが当たった。
君は花束持ってウチにやってきた。
好きですって、こんな私のどこがいいの。
バカだから好きな人に告白されたんだけどどうしようって相談した。いいんじゃないですか?お似合いだと思います!っていつもの敬語で返ってきた。
やけくその最終形態だったから、電話でありがとう、嬉しいよって返した。
毎日LINEをくれた。
好きだよ
可愛いよ
会いに行っていい?
送ってくよ、帰りは何時?
だんだん重いなって感じるようになって、だんだん息苦しくなった。
バイトとか普通の生活で返信しないと君は何通も送ってくれた。
送信取り消しもいっぱいついてた。
私が引っ掛けてその気にさせた。でも正直、重かった
正直、重かった。でも、私が引っ掛けたんだから。
めんどくさい気持ちから脱して、正常に戻る頃には君は私たちの関係を上司から後輩先輩同期みんなに伝えてた。
後戻りが出来なくなって、好きな人にLINEした。
苦しい、正直重い。男の子ってみんなこんなもんなの?って泣いた私に電話掛けてきて
追いLINEが苦手なタイプですか?っていう。
追いLINEなんて言葉初めて知ったよ。
僕も苦手なんですよねって、言われたから一緒だよって言われたみたいで気持ちが楽になった。
そのまま4時間しゃべって、誰も知らない話とか諦めぐせがついてる話とかいっぱいした。やっぱり好きな人の方が、話してて楽しい。
楽しい気持ちで電話を切ったら、不在着信とメッセージが入ってた。
いつもの好きだよ、可愛いよ、最後にやっぱり時間差で、おやすみってさっき好きな人から送られた同じ言葉で、とっても不快になった。
不快になることはほんとはいけない。
だって私が引っ掛けて、その気にさせたんだから。
私が落としたんだから。
君と別れ、好きな人と秘密の飲み会。好きな人と友達との話を聞かされて
桜を見に行こうよ。次の日、未読無視していた君からのLINEが増えていた。
これ以上追いLINEが増えても困る。
昨日知ったばかりの言葉を呟いて承諾した。
2人で市内の桜名所をまわってバイト先まで送って貰った。
バイトが終わって開いたらまた通知が入ってた。
ぼくのこと好き?って
正直、無理だと思った。
次の日電話で連絡を入れた。君のこと君と同じくらい大切にしてくれる人と付き合ったほうがいい。ごめん、好きじゃないって。
好きな人に考えてもらったセリフをそのまま言った。
花束はドライフラワーにして捨てた。
あれから好きな人とは飲みに行った。
君にも友達にも秘密で。
秘密の飲み会で、好きな人と友達がディズニーに言った話を聞いた。
なんでも話してくれる友達は、そんなこと言ってくれなかった。
ショックな気持ちを隠すように、御手洗に立って鏡の前に立つ。
ああ鏡よ、鏡。この世で一番最低なのは誰ですか。
鏡に聞かなくても、自分がよく分かっている。
最低なのは私だ。
私以外みんな幸せになってね。