私のなかで、秋といえば紅葉で、紅葉は遠出をして見に行きたくなる。毎年、秋になると紅葉を楽しみに行くのだが、去年は少し冒険をしてみた。
電車を乗り継ぎ訪れたのは、箱根だ。観光名所として年中栄えているのだが、紅葉の時期はさらに観光客が増える。
箱根湯本駅を出てすぐ、すでに紅葉スポットとして楽しめる景色がある。川幅の広い川と、その両脇に列をなす木々。向こう岸に渡るために橋がかけられており、その橋の中程に立つと、写真映えする景色が一望できる。ついカメラを構えてしまうので、訪れた記念にと、毎年同じ場所の写真がフォルダの中に増えていく。
箱根湯本駅は前にも訪れたことがあるので、ここまでは冒険にはならない。冒険というのは、箱根登山鉄道に乗って、箱根を掘り下げる旅に出たからだ。
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箱根登山鉄道は、今回初めて乗った。行ってみたかった場所であり、数日前に見ていたテレビで知った、スイッチバックにも興味を持った。
休日、朝からワクワクが止まらず、いそいそと支度を始める。思った以上に時間をかけて準備をしたが、なんとか午前中に自宅を出発し、電車に乗った。自宅からは時間がかかるので、昼過ぎくらいに到着した。
平日に出かけたにもかかわらず、箱根登山鉄道には思ったよりも多くの人がいてとても賑やかだった。ほとんどが外国人で、観光に来ていることは明らか。私が下車する駅は、大涌谷より手前にあったので、あまり人は降りなかったが、観光スポットもある駅なので、それなりに人が降りた。
スマホの地図と観光客の流れについていきながら、お目当てのスポットを目指す。やってきたのは、足湯ができるスポットだ。紅葉を楽しみながら、足湯も楽しみたい。温泉地ならではのことを満喫したいと計画した旅でもあるため、周りの景色を楽しみながら、ワクワクする気持ちを膨らませながら道を進んだ。
ついた足湯スポットには先客がいて、少し待ってから席に座った。初めて体験する足湯は、やや熱めのお湯に驚きながらも、あったまる感覚がなんとも気持ち良かった。やはり日本人だな、と答え合わせをするような、そんな感覚もあった。
紅葉はもう一息で、まだ緑が半分ほど残っていたので、紅葉を満喫できるとは言いがたかった。それでも見晴らしのよい景色と、澄んだ空気が気持ちよく、満足の行く旅ができた。
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帰り道、あったまった体で箱根登山鉄道の座席に座って揺られていたとき、心が満たされた感覚を味わった。これがリフレッシュするということか、と言葉の意味がすんなり理解できたような感覚だ。
来てよかった、また来たい、次はもっと楽しめるプランを立てたいと思った。こんなに心が満ちた旅をしたのは初めてであったと思う。
今年もぜひ訪れたいと思っているので、頑張ってスケジュールを調整してみよう。
しかしどうも今年は、休みを作るのが難しそうなのだ。やりたいこと、外せないことが一気に押し寄せているので、どうしても旅は後手に回ってしまう。他の場所に赴くことも考えたが、違う場所に行ったとしても、箱根は行きたい場所であり、他の場所では置き換えられない場所だ。なんとか都合をつけて、行けますように、と祈っている私もいる。行けるかどうかを決めるのは私なのに。
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これからも、毎年秋になれば去年味わったあの感動を思い出すだろう。行ってよかったと思えた旅は案外少ない。想像以上に良い経験ができたので、今年は更新したいと思うのだ。
去年見つけた美味しそうな飲食店。今年は行きたいな。昨年よりも色づいて、一層雰囲気を出している箱根にも出会いたい。再び心が満ち足りるあの瞬間を味わいたい。
思い描くだけで楽しいことがよく分かるのだから、きっと楽しいに違いない。すでに私の中の秋を楽しむ定番コースとなった箱根。初めて行ったときの感動が思い出として深く残っている。何度思い出しても新鮮な気持ちになれるので、私には欠かせない思い出だ。