これは3年前のこと。
「綺麗な紅葉とか見に行けたらいいのにね〜。でもそんなの忙しくて無理だよね…

ちょっと寂しそうにパートナーが笑う。

「うーん、そうねぇ」

あー、そんな時期か。
寂しい想いさせちゃってごめんね。
何ともない顔しながらも、心の中でそっと呟く。

◎          ◎

お恥ずかしながら、それまではパートナーに色んなことを頼りっぱなし。

遠距離恋愛だったから会いに行くのも大変で、仕事がバタバタだった私が会いに行くには、休みも取れない関係で難しかった。

だから仕事の調整がしやすいパートナーが会いに来てくれる事が圧倒的に多かった。
来てくれたら来てくれたで、そこまで行くところも無いから、基本は家にこもって一緒に過ごす。

たまに行く美術館ぐらいがお決まりのデートコース。

そんなんじゃ当たり前だけど寂しくもなる。
今思えば、そんなことすぐにも分かりそうだけど、当時の私はバタバタのお仕事真っ只中。

でも、最初の一言ではっとした。
これは何とかしないといけないのでは…?

◎          ◎

そこで思いついたのはサプライズ旅行。
場所は当時、新幹線ですぐ行ける京都に決定。

デートプランも内緒で計画。
実はこの時初めてちゃんとデートプランを考えた。いつものデートは特にノープラン。

お互い時間に急かされるのは苦手だから、行く場所だけ決めるちょっとのんびりめなデートが多かったのだ。

でも、その時はちょっと気合が入っていたので、バスで紅葉が綺麗な観光地を巡るコースを選択。
理由は移動はおまかせだから運転もないし、気軽に景色を楽しめるから。

夜ご飯には京料理を食べられるちょっと高めなお店を探して準備完了!
新幹線からホテル、バスやご飯まで2人分の予約を完了してその日を迎えた。

もちろん、予定を空けて欲しい旨だけ伝えて、当日まで何するかはずっと内緒。
さて、当日の反応やいかに……。

◎          ◎

そして当日。

「ねえねえ、結局今日どうするん?予定は空けてあるけどさ」
「今日はね……あ、チケットあげる。封筒開けてみて」

「はてな」でいっぱいの顔で封筒を受け取るパートナー。

「……。ええええ!まじで!?」

封筒の中を見て、すぐに驚きと嬉しさでいっぱいになる顔。

「そうです!今日は一緒に京都に行きます笑」

ちょっとカッコつけた顔で言ったけど、この時の私の心の中は、「ちゃんと喜んでくれて良かった……泣」の一言しかなかった。

そこから荷物を詰めて京都に直行。
バスで紅葉の名所を巡って、たくさんの写真を撮って、ところどころで美味しいもの食べて。

すごく高級なところに泊まったわけでも、ものすごく高級なものを食べた訳でもない。
そんな意味では何でもない、ふらっと出ていく旅だったけど、それでも楽しいし幸せ。

なんでも素直に喜んで楽しめる、この人と一緒で良かったと思える旅行だった。
ちなみに仕事一辺倒だったこの時の私も、少し肩の力を抜いて過ごせた。

旅行のおかげで仕事に追われてちょっと狭まっていた視野も少し広くなった。
何気ない日常も幸せなんだと気づくいい思い出だ。

◎          ◎

ちなみに今でもパートナーは笑いながら、その旅行の話をしてくれる。
長く付き合ってきたけど、秋が近くなると毎回嬉しそうに話すからこっちまで笑顔になってしまう。

あそこの紅葉が綺麗だったとか、バスツアーが良かったとか、ご飯が美味しかったとか。
これでもかってぐらいに褒めてくれる。

そして毎回最後はこの一言。

「あの時の旅行ね、すごく良かったの!」

こりゃダメだ。かわいい。

やっぱりこの人といて正解なのでした!と思わせてくれる秋の思い出。
今度はどこに行こうかな。