先日、商業施設で暇を持て余していたときに、どうせなら気になっていた映画でも観ようと映画館に向かった。券売機前まで行って、観たい作品を選択、座席を指定して、いざ購入!というところで手が止まった。

高い。映画1本に1,900円である。高い、高すぎる。久しぶりに映画館に来たが、こんなにも価格が高騰しているなんて。

これが元々待ち望んでいた作品だったなら渋々払ってでも観たのだろうが、ちょっと気になってた程度のものに1,900円は手が出せない。せいぜい1,200円程度だろうと思っていた私は、券売機をホーム画面に戻して映画館を立ち去った。
値上がりが止まらない。マックのハンバーガーは一番安いもので170円である。親いわく、昔は80円だったと言うではないか。

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生きづらい世の中になったと思う。世間は今「103万の壁」について議論を重ねているが、お金を稼ぐことが困難になり、お金を使うことに対してハードルが上がっている。

若者の〇〇離れが激しいと言われているが、23歳の私が若者を代表して言わせてもらえば、離れたくて離れているわけではない。

例としてよく挙げられるのが、お酒離れ、たばこ離れ、車離れ、ギャンブル離れ、結婚離れあたりだが、みんなが豊かでお金があれば、恐らくどれからも離れていない。調査結果の中に映画離れもやはりあった。そりゃ人の手から離れもするだろう、約2時間の映画を観るのに1,900円もかかるなら。

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なんてことを考えつつ、映画館を後にした私は再び時間を持て余す。映画を観るつもりだった2時間が丸々余ってしまった。お腹も空いていないのでカフェに入る気にもならない。
商業施設内を彷徨っていると、ふと本屋が目に留まった。欲しい本は特になかったが、吸い寄せられるように入店し、入口の新刊コーナーから吟味した。

結論から言うと、3冊購入した。小説やエッセイ、コミックなど、自分の趣味領域の書棚を見たのがよくなかった。面白そうなのがいっぱいあって、これでも厳選して買ったのだ。3冊、合計1,615円。ホクホクしている。

私の中での価値基準が決まった瞬間である。映画1,900円は高くて、本1,615円は安い。否、安くはないが全然払える金額だ。差額は約300円しか違わないのに、恐らく映画では得られなかった満足感を本から頂戴した。

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結局、値上げや〇〇離れと言われても、自分の好きなことにはお金を払えるものだ。

個人的な肌感ではあるが、若者が離れていないものとして推し活がある。ほとんどの人(特に女性)に推しがいるが、そこに対して節約している印象はあまりない。趣味や習慣的なアレコレから離れた先は、それぞれの推しにあるのだろう。

現代の人々は、推しにごきげんにさせられている。

ちなみに、最近の私の推しは絵本のパンどろぼうである。本屋やヴィレッジヴァンガードにグッズも売ってるし、ガチャガチャの種類も豊富である。見かけるとつい手を出してしまい困る。稼ぎにくい時代に推しへの貢ぎが止まらない。