ハロウィンを終えると、すっかり街はクリスマス仕様になる。ここから1ヶ月と少し、どんどん街は赤と緑でいっぱいの、なんだかめでたい景色が広がっていく。

子どもの頃は、クリスマスはただただ楽しい日という印象だった。年内最後の登校を終えて、クリスマスパーティーを迎える。2学期の打ち上げみたいな感覚もあったかもしれない。

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徐々に私のクリスマスへの感じ方は変わっていったように思う。

中学、高校は一気にクリスマスへの意識が薄れた時期だった。
特にこれと言った記憶がないが、それなりに家族や友人とケーキを食べたり、楽しく過ごしていたような。

しかし、大学生になると全体のクリスマスへの意識が、一気に高まった気がする。クリスマスまでに恋人が欲しいというセリフを聞くようになったのも、この頃からだったように思う。

そして、クリスマスとは、第一は恋人と過ごすもので、叶わなければ友人同士でわいわい過ごすものという概念が、私にインストールされたのもこの頃だ。

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おかげさまで、私の大学4年間のクリスマスは、当時の恋人とデートをしたり、友達の家に集まってみんなでホールケーキを食べたりと、楽しい思い出がたくさんできた。

社会人になってからは、恋人がいるときは、24日、25日というクリスマス本番が仕事でも、近い土日で2人でクリスマスを祝うというのが、私の中で慣習となっていた。

そんな中、事件は昨年のクリスマスに発生した。
今の彼とは付き合って初めてのクリスマス。しかし遠距離恋愛中のため、会ってクリスマスパーティーというのは、無理だろうなと思っていた。けれど、リモートなら実現可能ではと気づき、我ながらなかなかの名案だと思った。

さっそく彼に提案したところ、快く了承してくれた。離れてるけど一緒に同じメニュー食べれたらいいかも、リモートで楽しめるゲームなんかもしようかなと、わくわくしていた。

そんな矢先、数日前になって、彼からこんなことを言われた。

「ごめん、その日М1があるの忘れてた。別の日にしない?」

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М1とは年に一度の、お笑いコンテストのテレビ放映のことだ。彼はお笑いが好きだ。かつて、人生をやり直すとしたら、お笑い芸人養成所に入ると本気で言っていた。そんな彼にとって、年に一度の大事なイベントなのは私にもわかった。

でも、いやだった。どうしてもその日にクリスマスパーティーがしたかった。
だから私は彼の申し入れを受け入れなかった。

「じゃあМ1終わった後はどう?」

М1が終わるのは22時すぎ。
私の思うクリスマスパーティーの開始時間にしては、あまりに遅いものだった。

「その時間私が起きてたらそうしよ。もう寝てたらなしで」

ちなみに、私の平均就寝時間は22時なので、それはほぼパーティの中止を意味している。

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それを彼も察したのか、私がこれまでどんなクリスマス過ごしてきたのか尋ねてきた。彼は、うんうんと相づちを打ちながら私の話を聞いた。私も彼のこれまでのクリスマスを聞いた。彼はそもそもクリスマス自体にあまりこだわりがなく、これまでも私からすると随分あっさりとしたクリスマスを過ごしてきたようだった。その日の電話は何となく気まずい雰囲気のまま終わった。

残念だけど仕方がないと、なんとか心の整理つけ、クリスマスへのモチベーションを立て直し、私はクリスマスに備えた。

すると、当日になって急に電話がかかってきた。

「録画機械を買った。М1は録画して見る。クリスマスパーティーやろう」

結果、彼のその一言により、当初の予定通りパーティーを開催することとなった。パーティーは大盛りあがり。夕暮れから日付けが変わる頃まで続いた。

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クリスマスの位置づけ、存在感、好ましい過ごし方は人それぞれだ。そんな当たり前のことを改めて感じた。

今年はどんな風に過ごそうか。
これからも、その時々の自分にぴったりなクリスマスを重ねていきたいと思う。