「ブーブー」

通知のポップアップ音が聴こえると、即座にスマホを見てしまう。画面に映る化粧品ブランドの広告を見ては、「またか……」と静かに画面をオフにして、スマホを元に戻す。

付き合う前後で、男性と女性では温度差があるという。
私は、いつでも「追う立場」としての恋愛をしがちだ。それだからか、付き合った前後で、なんとなく相手との温度差を感じてしまうことが多かった……。
温度差を感じては、のれんに腕押しだと感じてしまい、一人言葉にできない自分の気持ちの、やりように困ったりした。

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「私と仕事のどっちが大事なの?」と女性は男性に問うことがあるときく。
「それは勿論、仕事だよ」と私は思っていたが、前の彼と付き合った時は、本当にこのセリフが何度も頭をよぎってしまった。
直接、言葉にしない私が悪い……と勝手に自己嫌悪に陥って、言葉にするも、「仕事なんだ」とあしらわれることが多く、自分の想いがどんどん張り裂けそうだった。
結局、私は言葉にするのを諦め、コミュニケーションは薄れ、その恋愛は終わった……。
終わって、終わらせて良かったと、ホッとしている自分がいる。

女性は、別れた後はあっけらかんと、切り替えが早い。新しい恋愛は上書きされるというのを聞いたことがある。本当にその通りだった。
別れた後の爽快感。それまでの彼との関係性の煩悩や自己嫌悪は、スッキリどこかへ流れてしまったかのように私は羽が軽くなった。

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「寂しい恋愛なんて、自己嫌悪に陥る恋愛なんて、やめなさい」「他に目を向ければ、他にも男性は沢山いる」と過去の自分に言いたい。
恋愛で自分の欠落を埋めようとしても、一時的なもので、埋まらない。自分で埋められる状態になってから、恋愛をしなさい。とも言いたい。

自分のプラスにならない恋愛なんて、やめた方がいいと思う。かつての私は、「なんで付き合ってるんだろう」「また一つ、煩悩が増えるだけだ。それ以外に、私の人生にメリットがない」と冷静に頭で考えて、別れる道を選んだ。
別れたい想いを告げると、彼はあっさりと快諾した。その返事を聞いた瞬間、彼は私との関係にはこだわりも想いもなく、私はただ一方的に、自暴自棄になり振り回されていたんだなと虚無感があった。

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そんな恋愛しかできなかったのに、今の私は成長したと思う。ちゃんと嫌な顔をしたり、自分の要望をしっかり伝えられるようになった。
会えなくて寂しい時は、「寂しい」と言葉にするようになった。そのように本音を言える相手に出逢えたからだし、自分も仕事の優先順位を下げたから対人関係に余白ができたのだと思う。

寂しさとの向き合い方、恋愛の仕方、自分の私生活を含め、何事もほどほどに調整することが大事だ。仕事に必死で大変な時に、恋愛はしてはいけないと思う。間違った相手を選び、間違った方向に人生が向いてしまう。
せめて、仕事の愚痴が少なくなるまでは、自分で昇華したり、女性同士の友人たちで飲み会をして励まし合うなど、乗り越える術を持っていないといけない。
そうでないと、その時の恋愛はのれんに腕押しだし、自分の人生も輝いていないはずだ。