街が煌めいていくこの季節が私はだいすきだ。
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心なしか、いや確実に、行き交う人々は心躍り足も3ミリくらい浮いているような、そんなワクワクドキドキの季節。
私も例外ではない。寒さを肌で感じ始めると、なんとなく心が弾み笑みが増える。
友人に「彼氏がいるわけでもないのに、よくそんなにクリスマスにワクワクできるよね」と言われたことがある。それも何度も。
え?関係なくない?そもそもクリスマスは本来、家族で過ごすためのイベントであるのだよ、と心で唱えつつ「確かに〜」と笑ってやり過ごしていた自分を抱きしめてあげたい。
だが、やっぱりクリスマスは彼氏と過ごしたい気持ちももちろんある。彼氏とクリスマスパーティーするの、彼氏とクリスマスマーケット行くの、彼氏と……と何度も何度も友人から聞いた。
そんなに彼氏と過ごす素敵なクリスマスを聞かされたら、それはもう憧れるしかない。
そろそろクリスマスを一緒に過ごす相手がいてもいいんじゃないか、そう思った私は動いた。
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友人に「いい人いない?」と聞いてまわり紹介してもらい、ある人と出逢った。
何度か食事に行き、連絡も毎日のように取っていた。
嫌じゃない、それが第一印象。大変失礼であることは自分でも分かっている。可もなく不可もなく、この人なら別に付き合っても……そんな風に思ってしまう性格の悪さはひた隠し、それ以降も会ったりしていた。2023年11月初め。彼から告白された。返事はもちろんOK。私に彼氏ができた。
何度か会っていたときも、告白されたときも、彼に対してちゃんと好きの気持ちはあまりなかった。本当に最低だけれど、私はこういうことがよくある。
付き合ってから好きになれるかも、そんな淡い期待をしてはすぐに打ち砕かれ、人を好きになれない自分だけが傷ついたような感覚に陥る。
相手が傷ついているかもしれない、なんてことは後々になって気づき、そんな風に傷つけてしまう自分にも嫌気がさした。
人としては普通に好き。連絡が来ることも会うことも嫌じゃない。けれど、じゃあその先は?この人とあんなことやこんなことできる?
その問いに私はいつも首を横に振ってしまう。じゃあ好きじゃないじゃん。分かってはいるけれど、でも私もみんなみたいにキラキラしたかった。
結局私は彼氏という存在が欲しかっただけなんだ、と気づいてしまうときが一番虚しいのである。
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そんな空虚な想いを抱えたまま迎えた念願のクリスマス。私は彼と一緒に過ごした。
彼が欲しいと言っていたブランド物のマフラーをプレゼントした。彼からはマフラーの値段の十分の一くらいの値段のものをもらった。
ものは値段じゃない、でもちょっぴりショックだった。「ごめん、微妙だったね」私の反応を見て、慌てたように彼が言った。
「ううん、嬉しいよ、使うね」あのときの私に言ってあげたい。もっと大人な対応をしなさい、微妙だと思っているなこの人、なんて悟られないようにしなさい。
その後もちょっとだけ気まずかった。プレゼントの値段をお互い決めていたら良かったかな。彼がいいもの買っちゃった、あげるの楽しみなんて言っていたから期待した私が悪い。
ものは値段じゃない、でもやっぱり期待して求めてしまうのが人間だとも思う。
クリスマスらしい場所でカップルみたいなデートをした。カップルだったけど、カップルごっこだったのかもしれない。
煌めく街中を歩き、彼の横顔を見つめる度に、これが憧れていたクリスマスなのか?と何度も思った。
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クリスマスは綺麗だけど残酷だ。やっぱり好きじゃない、という気持ちに真正面から気付かされてしまうから。
あのクリスマスに戻れるなら、私は彼とではなく、家族と過ごそうと思う。