「あのクリスマスに戻れるなら」と思うクリスマスが私にはあります。それは去年のクリスマスです。今年もクリスマスがやってきますが、私はどうしてもホリデー気分になれません。私にとって何よりも大切で、誰よりも懐いてくれていた愛猫のロイちゃんが今年のクリスマスはいないのです。
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先月末、海外旅行中だった私に母から「ロイちゃんの様子がおかしい、具合が悪そう」という緊迫したメールが届きました。母の緊張感は感じ取ったもののロイちゃんは体が弱く、よく体調を崩すけれど、すぐに元気になる子だったので、それほど心配していませんでした。しかし、帰国して家に帰ると、ロイちゃんの異常な様子に唖然としました。
もう立つこともできず、水さえも飲まない、まさにもう死の直前であることが一目見てわかりました。母が「ロイちゃんはよく頑張ったんだよ、あなたの帰りを待っていたの」とロイちゃんを抱え上げ、私がそっとロイちゃんの頭を撫でた夜がロイちゃんにとっての最後の夜でした。
翌朝、冷たく硬くなったロイちゃんの姿が毎晩思い起こされます。
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ロイちゃんは真っ白な体のエキゾチックショートヘアの男の子です。去年のクリスマス前、寒くなり始めた頃に家にやってきました。とっても甘えん坊で、家中どこへ行くにも私の後を追ってくる、そして何よりイタズラ好きな子でした。
私たちの食卓テーブルに乗ったり、先住猫のビーちゃんに意地悪してみたりしては、私たちに怒られ、シュンとなる子でした。そのため、去年のクリスマス、クリスマスツリーのオーナメントをロイちゃんが触り、落とされることを想定し、ロイちゃんをツリーの部屋とは別の部屋で過ごさせていました。
しかし、あのクリスマスに戻れるなら何度オーナメントを落とされようと、また付け直せば良いことだった、去年のクリスマスはロイちゃんにとって初めてのクリスマス、2回目のクリスマスを迎えられなかったロイちゃんに好き放題イタズラさせてあげれば良かった、と悔やんでも悔やみきれません。
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たったの2年も生きられなかったロイちゃん。家の子で幸せだったでしょうか。助けてあげられなくてごめんね。私の弟になってくれてありがとう。私の人生に現れてくれてありがとう。だいすきだよ。直接伝えれば良かった言葉が今になって溢れます。
ロイちゃんがこの世界から消えたのに、世間はクリスマスソングに包まれ、皆ホリデー気分を楽しんでいます。ロイちゃんのいないクリスマスがやってきます。この喪失感や無力感がクリスマスなんてちっぽけなイベントに思わせます。
サンタさん、あなたは何でも欲しいものをくれるんでしょう。ロイちゃんと過ごすクリスマスが欲しい。そんな願いは叶わないとわかっているけれど、そう願わずにはいられないのです。
だからせめて、どうかロイちゃんが天国で沢山のクリスマスツリーのオーナメントを触って落として、イタズラを楽しめていますように。ロイちゃん、私少しずつロイちゃんがいない世界を受け入れていくよ。どうか、どうか安らかに。