「あなた、中国に行きなさい」
今でも覚えている。大学2年生の秋。
私は浪人して志望してた大学に落ち、行きたくもない大学に行き、大学生なのに心はずっと晴れず、でも語学だけは物にしようと、第二外国語で選択した中国語の勉強は一人、頑張っていた。
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正直、志望していたわけでもなかったし、偏差値をいくつも落として入学した先だったので、大学内にはろくに友達もいなかった。
でも、「語学を物にしよう」と自ら志願して選んだ学部だったので、中国語の勉強だけは一人、コソコソ頑張っていた。
陰でそれを見ていた中国語の先生が、個室に私を呼び出し、「私も2ダブしたの。でも、私は中国語を勉強してからは、なぜか人生がうまく行って、今本当に満足しているの。だから、あなた絶対に中国に留学した方がいい」
そう言って、留学先の中国の大学のパンフレットをくれた。
正直、当時、中国語の先生にそう言われた時、迷っている自分もいた。
今は今で、インターンだのバイトだので日々、忙しなく充実していた。だから、正直それらから離れて中国に留学に行くことに、頭ではメリットをそこまで感じていなかったのもある。
だから、話がある前から、正直中国行きは迷っていたが、先生のその、親身な最後の強い一声が、完全に行動のきっかけとなり、本当に大きな一押しだった。
今思えば、先生も努力家で、きっと私のように猪突猛進で、わき目も降らず目の前のことに夢中になるので、なんとなく、当時の私のことを放っておけなかったのだと思う。
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中国留学自体は、もともと一から自分の意思で決めて行ったわけではない。私はたまたまラッキーで、側に親身になって応援してくれる人がいたから、周囲からのお声がけで参加した。
ところが、空港を降りて、いざ半年間の大連での生活が始まると、波瀾万丈、毎日が中国での異文化のリアルに直面して、想像以上に面白かった。
授業も毎日ついていくのに必死で、でも3ヶ月くらいすると慣れてきて、ディープな中国での生活が楽しくなった。留学が終わる頃には、さんざん中国人大学生たちと会話してきたのもあり、これ以上中国語を勉強することや中国文化を知っていくことに、正直天井を感じはじめている自分がいた。
あんなに漢字や中国語が好きだったのに、意外だった。
それは、決してネガティブなものではなく、中国語を勉強して、中国人と話すのがこんなに面白いのなら、英語を勉強してもっと色々な国の人たちと話したら、もっと面白そうだ、と明確に思ったのがきっかけだ。
それくらい、大連での半年間の留学生活は毎日が充実していた。日本でHSK6級をとれても、このようや文化を知ったり直面する機会は、絶対に持てなかったなと思いながら帰国した。
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帰国後、私はすぐに頭を切り替えて英語の猛勉強をし始めた。やはり英語を使って仕事がしたく、1社目は上司もイギリス人で、チームに日本人が自分しかいないグローバルな環境に行った。
中国語の先生にきっかけを頂いたからこそ、私はのびのび挑戦ができ、大学受験で失敗した悔しさを就職で晴らすことができた。本当に先生のおかげだと思っている。