雪が好きだ。
あの降り積もるふわふわほろほろとした白い塊。
触れると一瞬で溶けてしまう子達も居ればさっくりと手で掴める子達も居る。クッキーに例えたら高級店のお店のクッキーのような存在。冷たい指先を覆った手袋から分かるシャリシャリもふもふとした氷の感触。目を凝らすとひと粒ずつがキラキラと輝いている。
まさしく氷の宝石。
見てるだけでうっとりする、そんな雪が私はとてつもなく大好きで窓越しに見える雪景色を見るとつい厚手の上着を羽織り、手袋をはめ、外にバンと飛び出してしまう。

小さい頃から何年経っても誰よりもはしゃぎ、舞い上がる。その気持ちは21歳の今も変わらずで、今年はまだ雪は積もっていないどころか降ってすらいないので数日でいいから降ってもろてあわよくば積もって欲しいなと冷え性の自分が性懲りもなく考える。
そんな私には雪にまつわるエピソードがいくつかある。

◎          ◎

例えば18歳の頃。家にいるなと親に言われた数ある中の追い出された日、だったのだがその日は前夜くらいから雪が強く降っており、周りが猛スピードで雪景色へと変わっていった貴重な数日だった。

家にいるなと言われたときは少ないお金が入った財布と上着と手袋しか持っていく物がないのでなんとかお金を使わず外で時間を潰すしかないのだが、その日はとても雪が積もった日だったからか精神的には辛かったが、それでも敢えて雪を全力で楽しんだ。

キツイからこそ余計に雪への"好き"でその時だけでもテンションを上げたかったのだ。

どうせ帰ったら長時間立たされる。寝たら蹴られる。叩かれる。分かりきってる。その時が来るまでの時間がいつでもしんどく、雪と触れ合うのは確実に楽しいし幸せなことなのに頭の片隅で色んなことを考えてる自分が辛かった。

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雪はその日も綺麗だった。キラキラ輝いてて触るとシャリシャリしてる。ぎゅっと握ると氷の冷たさと共に固まっていく。バイクの上や車のボンネットの上にもっふりと積もっている真っ白な氷をせっせと掻き集め小さな雪だるまもどきを作ったり、ひたすらコロコロ転がせられる所まで転がしていったりした。シンプルに凄く楽しかった。

そしてふわふわと積もっている雪を見ると、つい衛生的に良くないことだと分かっていながらやりたくてしょうがない衝動にかられるのが"食べること"だ。
昔幼少期の頃に観た国民的アニメのとあるシーンで雪遊びに出掛けた主人公が、友達から貰ったいちご飴をパクリと口に含みそのあとふわふわの真っ白な雪を口に入れては2人で甘くて冷たくて美味しいと歓喜していた回がある。私はそれを観て凄く凄く羨ましかった。

甘酸っぱくてベタないちご飴とひんやりとした雪。考えるだけでわくわくが止まらない。確か18歳の頃にはもう流石にしていなかったが(多分)、いつか必ずやってみせると胸に誓った幼き私はその数年後辺りには実行した記憶がある。

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その時の想い出は割と鮮明に覚えていて、その日も雪が程よく積もっている中、1人はしゃいで暫く雪だるまや雪の上に寝そべるなどの一連の遊びをこなしてから、(誰もいないのをしれっと確認し)ポッケに忍ばせていたいちご飴。そう、あの主人公が食べていた様なベタなThe・いちご飴を偶然を装い白々しくポッケから取り出しては口に含んで雪を食べたのだ。

その時の感想としてはまずそのようなエモっちいことをした自分に酔い、酔ってはその美味しさにとても感動した!……と、いう訳には中々いかず、実際はなんだか絶妙な感じ(所詮、不衛生な氷の塊なので見た目に騙されるなといった具合)だったのだ。

まぁそれも良い想い出には変わらないので結果的には楽しかったのだけれど、ただ一言だけ言えるのは雪は見た目に反して食べるのはあまり宜しくないよということだ。

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改めて雪は好きだ。単純に楽しい気持ちにさせてくれる。勿論、雪国出身の人に話したら殆どの人に雪をなめるな、お前は雪の大変さを知らないと怒られるかもしれないし、言われたら、だよなぁ……と素直にその通りなので頷かざるをえない。

とはいえやはり雪と普段から滅多に巡り会えない私はきっといつまでも雪にときめきを覚えコレからもイイ歳こいて雪と戯れるだろうと思う。なんなら今更だけどウィンタースポーツにもいくつか挑戦をしたいと思っている。実はどれもしたことが無いのだ。

流石に40、50にもなったら体力的にしんどいから眺めてるだけになるかな?と一瞬頭をよぎったが、私のことだ。多分相変わらず雪と遊んでるだろう。