雪はやっかいなものという印象を持っている。前は雪が降ればわくわくして、積もることを期待していたはずなのに、いつしか降らないでほしい、と思うようになった。

何がきっかけになったのかは定かにしてこなかったが、今回、考えてみるとしよう。

◎          ◎

雪がやっかいに感じるのは、電車の遅延があったときや車を運転しているときだ。いつもできていることができなくなったとき、雪は予定を狂わせると感じる。

私の出身は豪雪地帯とは言わないが雪がある程度は降る地域だ。雪が積もれば、雪かきのために朝早く起きて、車を動かせる状態まで道を拓く父の姿が思い出深い。冬はいつまでも布団の中にいたい願望を頑張って消さなければいけないのだ。

免許を取って自分で車を運転するようになり、いつしか自分で雪かきをしてから車を運転しなければいけない時がくると考えると面倒くさいと思うようになった。父が冬にもかかわらず汗だくになって部屋に戻ってくるあの作業を、次は自分がしなければいけないのだ。とてもやる気が起きるとは思えなかった。

◎          ◎

もうひとつ、雪がやっかいだと思う理由がある。路面凍結だ。私の行動範囲には橋がかかっている道路も多くあり、橋を越えて目的地に向かうときが多かった。

朝は特に気を使う。出勤や登校の時間帯は、当然のことながら車が多い。小さな渋滞が起きていることもしばしばある。雨や雪であればなおさらだ。そのため、橋にさしかかったときに渋滞にはまってしまうといつもよりも怖い運転になるのだ。

路面が凍結していると、私の思いとは裏腹にハンドルを取られてしまうことがある。スリップだ。これまで大きなスリップを起こしたことはなく、幸いにも事故に遭うことなく過ごせている。しかし、今日スリップを起こすかも知れないという怖さとともに運転をしなければいけないのはとても神経をすり減らしてしまう。

できればいつも通り運転したいのだが、こういうときの雪はやっかいである。

◎          ◎

数年前、早朝の橋を走行したことがある。休日の早朝。通勤時間にもならない時間で、大通りでも空いていた。普段であれば、車通りの多い道は車の熱やタイヤとの摩擦によって多少早く雪が溶けるため、路面凍結もやわらいでいることが多い。しかし、休日で早朝というタイミングは車もそれほど通っておらず、路面は霜が降りたままで白かった。

あたりは霧が出ており、やや視界不良。そのなかで目的地まで車を走らせるので、運転にはとても慎重になった。どうか安全に運転できますように、と心のなかで願いながら運転した。何事もなく目的地について車のエンジンを切ったとき、声に出して一息ついたくらいだ。

この経験をしてから、ニュースで見るスリップの瞬間が一層ヒヤッとするようになった。雪が降っている地域への旅行はやめよう、とか、冬の帰省は控えようなど、運転はしなくても雪の降らない地域だけに移動を留めるようになった。

◎          ◎

今は積雪量の少ない地域に住んでいるので、雪が積もってやっかいという場面に出会うことは少なくなった。しかし、路面凍結はついてくる。今でも通勤のためには橋を渡らなくてはいけない。転ばないように、一歩は小さくなり、重心の置くところには慎重になり、いつもよりも時間をかけて歩く。

雪に強い地域ではないので、交通情報にも気を配る。遅延や減便がないかをチェックしてから出かけないと、いつも通り出勤できないこともあるからだ。

雪は私の予定を狂わせる。子どもの頃は喜べていたものの、免許を取って車を運転するようになってからは雪が降らないことに喜ぶようになった。どうか雪が降りませんように、明日いつも通り出勤ができますように、と願う自分がいるのだ。

最近は大規模な寒波が押し寄せてくる。寒さだけでもかなり堪えているが、普段雪が降りづらい地域にも積雪があると言われると身構えてしまう。

今年の冬も安全に、穏便に過ごせますように。