大学生になって、アルバイトを始めた。これは私にとってお金との距離感が大きく変わったきっかけだ。今までもらっていたお小遣いとは違う、自分で稼いだお金。初めての給料日に銀行のアプリを開いた時には、とても嬉しかった。

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高校生の時もお小遣いをもらって購買でパンを買ったり遊びに行ったりしていたが、親が稼いだお金という認識が強かったし自分で額をコントロールできないので自由に使うことは難しかった。お小遣いをもらう頻度もバラバラで、毎月もらうと決めても管理が面倒になっていつの間にかやめてしまっていた。ただ学校と家の往復を繰り返すだけの生活では、お金を使う機会もなかったのだ。

大学生になってから電車通学を始め、駅直結のショッピングモールなどに行く機会も増えた。当然欲しいものが増えていく。コスメ、バッグ、服、美味しそうなお菓子、などなど……

自分で稼いだお金でなら、自分の責任の元で、罪悪感なしに経済活動を行うことができる。これ、買っていい?といちいち母に聞いていた時代はどこへやら。自分が買いたい、買うべきだと思ったら買う。それだけのことなのに、とても嬉しい気持ちになる。値段を見ると、バイト何時間分だ、と考えるようになり、お金の感覚が少しずつ分かるようになってきた。ここで買うと安い、このカードで支払えばポイントが貯まる、もうすぐセールがあるはずだから今は買わないでおこう……賢く買うコツも少しづつだが身につけてきていると思う。もちろん、とても気に入った一点物は即決で買う。もう出会えないかもしれないから。

お小遣いも定期的にもらうようになったが、基本的には貯金に回すようにしている。毎月の支出がバイト代でまかなえた月には、自立した感を覚えて誇らしい気持ちになるものだ。

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来年の夏に短期留学を控えている今、留学貯金を始めた。留学費用は家から出してもらえる予定なのだが、準備や現地で使うお金は自分で出したいと思ったからだ。バイト代とお小遣いのほとんどを費やしても、なかなか貯まらない。実家暮らしなので生活費は払っていないし、食費もほとんどかかっていないのに。しかも、1年半かけて貯めているお金の大半が来夏に吹っ飛んでいくなんて信じられない。特に今は円安だし。

お金は楽しては貯まらない。父がよく言う言葉だ。今私が頑張って貯めている金額の何十倍、何百倍、いやそれ以上ものお金を、これまで私に投資し、健康に育て、大学にまで行かせてくれた。そして今も、私の学費や留学費用に費やしてくれている両親には、本当に頭が上がらない。バイトを始めてからより一層、身に染みて思う。

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こんなことを両親に話すと決まって、「学生の本分は勉強なんだから、そんなこと気にしないで勉強頑張りなさい」と言われる。家にお金を入れられるほど稼ぐことはできないし、両親もそれを望んではいないだろう。だからせめて、費やしてくれている額に見合う成果を出せるように頑張りたいと思う。