「ピンクとは可愛くなってやっと友達になれた」なんて悲しい言葉だろう

ピンク色とは、可愛くなってからやっと友達になれた。
私は子ども時代、父や兄からしょっちゅう容姿を揶揄われていた。ブス、鼻ぺちゃ、汚い、ほくろが並んでる、あはは。後になって聞いてみれば、本気で言っていたわけではない、むしろ逆だと弁明を受けた。けれど、罵詈の傷は、長い間、私をピンク色から遠ざけ続けた。だって、ピンク色は可愛い子の特権だと思っていたから。可愛くない自分が、着ていいわけない。選んでいいわけがない。本気でそう信じていた。
そんな考えが顕著に表れたのが、成人式の振袖を選ぶ時だった。お店の人は言った。「今年の流行は水色系ですけど、赤とピンクは毎年安定して多いですね。お客様は肌が白いから、淡いピンクや水色が似合うと思いますよ」。にこにこ笑顔の店員さんに、私は強く頭を振った。「いや私、ピンクは絶対似合わないんで。そういう系の顔じゃないんで。あと水色は別に好きじゃないんで、悪いんですけど、他の見せてください」。あの時は、店員さんを困らせてしまったかもしれない。それくらい強く、拒絶したから。
そして、最終的に私が選んだのは、茶色の振袖だった。
後日完成した写真を見て、なんとも言えない気持ちになったのを覚えている。茶色が、情けない顔によく似合っていたから。
しかし同時に、力強い決意が湧いてきた。悔しい。もうこんな悲しい思いはしたくない。
大学の卒業式は、絶対にピンクの着物を着てやる。絶対に、可愛くなってやる!
私は努力した。まずは揶揄われたほくろを除去した。ほくろ一つ一つに麻酔注射を打ち込み、炭酸ガスレーザーで焼き取る。人間の皮膚の焼ける匂いを知った。拷問のような痛みと経験に涙を流し、術後は紫外線に当てないように、顔中絆創膏だらけで過ごした。そんな自分を鏡で見るたび、フランケンシュタインってこういう気持ちなのかな、なんて思ったりした。
削られた肌が隆起してくる間に、ピンクに合うファッションスタイルを勉強した。数週間ネットサーフィンをして目を引かれたのは、金髪×淡いピンク×白の組み合わせ。見た瞬間、これだ!と思った。ハイトーンの髪は面長解消にもなるし、私の暗いイメージを大きく変えてくれる。淡いピンクの着物なら、地味な顔立ちとも共生できる。白い袴なら、上品にまとめられる。
そう決めたら一直線。髪をブリーチし、金髪にした。眉毛もブリーチした。メイクの研究も抜かりなかった。着物の画像を拡大して顎の下に固定しながらポイントメイクの微調整を続け、続け、ついに完成させた。
無事卒業が確定し、着物と袴を選びに行った日、私は淡く、それでいて刺繍の豪華なピンクの着物を選び取った。そして袴は、桜の花びらが散っている白地のものを選んだ。試しに上から当ててもらった時、スタッフさんが言ってくれた。「すごい、この組み合わせ、超可愛いです!めっちゃ似合ってます!!」
卒業式当日、自分でメイクをして、着付けてもらい、写真を撮る。そこには、淡く華やかなピンクと笑っている、可愛い人がいた。
アルバムは、しょっちゅう見返す。私にとって、大事すぎる思い出の写真だから。可愛くはにかんだ自分に、つられて笑顔になる。よかったね。頑張ったね。でも、時々、なんとも言えない気持ちになる。
今もそうだ。「ピンク色とは、可愛くなってからやっと友達になれた」。ねえ、こんな悲しい言葉って、他にある?
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