もし旅行に行くなら、同じ場所を何度も訪ねるのも楽しいけれど、毎回新しい場所を訪ねるほうが好き。そう考えがちな私だが、香港は何度も訪ねたくなる。それは多分、以前住んでいたからという単純な理由だけでなく、今の私を作ってくれた特別な場所だからだと思う。 

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幼少期に3年ほど香港に住んでいた私。小学校低学年で日本に戻ってきてしまったため、香港にいた頃の記憶は正直おぼろげ。そんな私に一昨年、久しぶりに香港を訪ねる機会があった。

約20年ぶりの香港は、おぼろげだった記憶を鮮明にして蘇らせてくれた。見覚えのある景色、電車での広東語のアナウンス、冬瓜湯の味。自分が確かに以前ここに住んでいたということを思い知った。そしてふと、香港にいた頃の出来事が今の私を作っていることにも気付いた。

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大学で英語を学び、仕事でもたまに英語を使う私だが、私にとっての英語学習のルーツは、香港で通っていた現地の幼稚園で英語を第一言語として使っていたこと。記憶の中のことが全てではなく、記憶には残っていない部分にも自分のルーツがあり、過去に自分が経験してきた全てのことが今の自分につながっている。そんなことをしみじみと感じた香港訪問だった。

また香港を訪ねたらきっと、今まで気付いていなかった自分の一面と、新たな香港の魅力を見つけることができる。だから香港は私にとって特別な場所であり、何度でも訪ねたいと思うのである。