好きな色を似合う色に。今日も私は黒い服で頬をピンクに染める

私が一番好きなコスメ、それはピンク色のチークだ。
もともと顔に血色感がない私だが、チークをぽんと両頬に乗せるだけで途端に顔がパッと明るくなる。
チークはいつも必ずメイクの最後に使っている。ほぼ完成のはずのメイクがチークを乗せるだけで一気に3割増しくらいになる気がするからだ。その瞬間が単純に楽しいし、メイクの「しがい」を感じる。
旅行にチークを持って行き忘れると旅先で購入するくらいには、私のメイクに欠かせない存在である。
私が初めてチークを使ったのは中学生の時だ。
周りに流されるように化粧デビューを果たした私は右も左もわからないままお小遣いで手に届く範囲のコスメを適当に揃えていた。そして週末がやってくると出掛ける数時間前からYouTubeのメイク動画を参考に鏡の前で格闘していたのをよく覚えている。
もともと肌は白い方だったので、チークやリップはよく映えた。当時仲の良かった運動部の友人はそんな私を見て、「白い肌だとピンクが似合うからいいな〜」と日に焼けた顔で笑っていた。
「プチプラピンクメイク」の動画で登場したコスメをとりあえずで使っていた私はその言葉に心底ホッとしていた。
大学生になり、パーソナルカラーというものが流行った。それまで意識したこともなかったが、確かに友人と手を並べるとみんな少しずつ日焼けの下の肌色が違っている気がした。
パーソナルカラー診断には行ったことがない。プロに聞かなくても、友人の手と並んだ私の手の色はどこからどう見てもイエローベースだったからだ。
ブルベかイエベかによって、似合う色が違うことを知ったのはもう少し後だった。
服の色はそもそも意識して買ったことはなかったし、その時々で可愛いなと思った物を購入していた。もちろんコスメも同じで、赤系、ピンク系、オレンジ系なんて気にしたことはなく、新たなコスメを試すよりお気に入りのものしか使わないタイプだった。
肌のくすみを飛ばしてくれる紫色の下地に、ブラウン系のアイシャドウパレット。ピンクのチークに、赤系のリップ。どれかを使い切ったらまた同じ物を買う。たまに友人からプレゼントしてもらった自分では買わない色のコスメを試しても、結局いつも使っている物に戻っていた。
しかし大学生になって初めて知る。どうやら、イエローベースの私の肌にピンクのチークは似合わないらしい。
それを知ってから一度、私の肌と相性が良いらしいオレンジ系のチークを購入したことがある。いつもと同じようにメイクの最後にチークを乗せるとあまりにガラッと雰囲気が変わったので驚いた。単純によく似合っていたし、なんだかいつもよりおしゃれな感じがした。
でもあまり可愛くなかった。私の中の可愛い、はピンクのチークだった。
自分に似合うメイクか、自分が好きなメイクか。
どちらが正解かはわからなかった。もちろん正解なんてないだろうし、自分が満足できる方を取るべきなんだろうけれど、「自分が似合わない自分が好きなメイク」は選択肢として少し重かった。
悩んだ私は自分が好きなメイクをなんとしても似合わせようと思った。
私は今、基本黒の服しか買わない。黒のズボン、黒のTシャツ、黒のアウター、黒のタンクトップ。黒の衣服ばかりなので、クローゼットから目当ての服を取り出すのに時間がかかる。一年中、上下真っ黒で過ごしているもんだから、夏には「暑くないの?!」と驚かれ、冬には「黒‼︎」と笑われる。
それでも私が黒い服ばかり好んで着るのは、少しでも肌を白く見せるためだ。
「白い肌だとピンクが似合う」
どこかで聞いたその言葉がふと頭をよぎる。
「白い肌だとピンクが似合う」
「白い肌ならピンクも似合う」
そうやって今日も私は自分の好きなチークを頬に乗せる。
黒い服に身を包んだ鏡の中の私は頬をピンクに染めながら、なんだか満足そうだ。
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