今年は毎日8000歩、歩く。そこから新たなものが目に入るはず

2025年、私は「歩くこと」の楽しさをもっと感じながら、「1日8000歩」歩くことを宣言する。
この話を家族や友人にすると、たいてい「健康のため?」と聞かれる。もちろん健康のためでもあるが、それだけではない。私にとって「歩く」という行動は、日常にほんの少しの楽しさと幸せを加えるためのものでもある。
歩くことで、日常の中に隠れているささやかな幸せを見つけることができる。例えば、大学へ向かう途中にある公園は私のお気に入りの場所だ。そこで散歩している犬たちを見るのが、最近見つけた小さな楽しみである。
ある日、その公園で茶色い柴犬が、私を見つけた途端にリードをぐいぐい引っ張りながらこちらに駆け寄ってきた。普段は人見知りの私だが、そのときは初対面にもかかわらず飼い主のおばあさんと自然に会話が弾んだ。歩くとこんなにも素敵な出会いができるのだと実感し、心があたたかく満たされた。
また、歩けば新しい場所や発見にも出会える。ある日は路地裏に新しいパン屋を見つけ、その店で買ったクロワッサンが驚くほどおいしかった。また別の日には見慣れた道に咲き始めたアジサイの花が、梅雨の訪れを教えてくれた。こうしたささやかな発見が、忙しい毎日を過ごす私の心に余裕を与えてくれる。
そもそも私が歩くことを意識するようになったのは、昨年の秋のはじめ、友人の一言がきっかけだった。その日、一緒に食事をした私たちは、まだ話し足りずに周辺をぶらぶらと歩いていた。すると、友人が「東京駅まで歩いてみない?」という突拍子もない提案をしてきた。六本木駅から東京駅まで、普段なら電車で移動するところを、約1時間歩いてみることにした。
日中はまだ汗ばむような季節だったが、夜になると心地よい風が吹いていた。ビルの間を通り抜けるひんやりとした夜風が、それまでの蒸し暑さを忘れさせてくれた。夜の東京の街は、昼の賑やかさとはまた違う表情を見せる。静かで涼しい夜風、時折聞こえる車の音、そして高層ビルの光が作り出す景色。その一つ一つが魅力的だった。
車や電車ではあっという間に通り過ぎてしまう景色や空気を肌で感じることで、見慣れた東京の街が特別なものに変わっていく。電車なら15分程度で着いてしまう距離が、これほどまでに豊かな時間になるなんて。そう気づいたとき、「歩く」という行動が私にとって特別なものに変わったのである。
では、なぜ「8000歩」という目標を立てたのか。昨年末、私は自分の1日の平均歩数をスマートフォンの万歩計で調べてみた。その結果は、6571歩。調べる前は「結構歩いているかも」と思っていたが、実際は予想よりも少なく、その結果にショックを受けた。
だからこそ目標を立て、日常の中で意識して歩く習慣を身につけようと考えた。そして、昨年の自分を超える歩数でありながら、無理なく続けられる目標として「1日8000歩」を掲げた。数字だけでなく、歩くことそのものをもっと楽しむための目標だ。
2025年、私は新しい景色や出会いを求めながら、この「1日8000歩」の旅を楽しんでいきたいと思う。毎日達成するのは簡単なことではないかもしれない。忙しい日や疲れている日、気分が乗らない日もあるだろう。でも、そんな日も無理のない範囲で「ちょっとだけ歩いてみる」ことを続けていきたい。
たとえ8000歩という数字に届かなくても、歩き始めることで新しい景色や出会いが待っている。歩くたびに見つける小さな幸せが、きっと私の人生をもっと豊かにしてくれるだろう。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。