自分の可能性を信じる、というのが、私にはなんだか無理やり感があって、自然と受け入れることができなかった。というのも、「信じる」という言葉にモヤモヤとした疑問を抱いてしまうのだ。

将来の可能性、現在いる場所(人生を長く見たときに、今自分がいる地点)を想像することは楽しい。それを自分の力で実現させたとき、もっと楽しいし、生きがいを感じる。

けれど私は、そうした生きがいを感じるまでに心が折れそうになるのが現実なのだった。それを克服しないと、と意気込むたびに自分はダメ人間だと思ってしまっていた。

◎          ◎

この4年で私は、そんな暗闇から脱出したいと思うようになった。まあ、転機が訪れたといっても良いのかもしれない。
『チャンスは自分で掴むもの』
この言葉に、ちょっとまえの私は怯えていた。

ひたすら、人生はそんなに過酷なものなのか、そしたら勝負するのをやめよう。そう諦めモードになるにつれてネガティブな感情ばかりが渦巻いていく。でも早く、この闇から脱出したい!ネガティブな自分とはさようならしたい!

そう思い始めてから、猛スピードで時間は過ぎ去っていったのだ。

実を言うと20歳までメイクをせず、すっぴんで過ごしていた私は、まずそれに、「これじゃあ、ダメだ。まずはメイクからやってみよう!」そう決めて、クローゼットにしまってあるポーチから慣れない手つきで中学時代に買った韓国コスメを取り出し、下地を塗ってアイシャドウ、マスカラでまつ毛を上げて、少しずつ顔になじませるようにしてメイクしてみる。そうすると、やっと大人になれたみたいで、心がウキウキした。

◎          ◎

しばらくすると手持ちの化粧品では物足りなさを感じた私は、SNSで今はやりのメイクを調べて近所のコスメを扱っているお店へ飛び込んだりもした。アイラインひとつ取っても、極細やカラーが入っているものなど、一体何が自分に合うのだろうかと迷い始めていた。アイシャドウだって、ラメ入りと普段使いしやすいマットカラーの4色が入ったパレットや、ブルべ、イエベそれぞれに似合うカラーが案内されていることに、私はようやくメイクすることの楽しさを思い知った。

メイクするだけで、気持ちが高まってその日一日が良い日に思えてくる。明日もきっと良い日になるはず。そうするうちに、ネガティブな感情が半分は取り除かれたように思う。

その半分は、時々揺れ動くようにして現れるが、それは自分だけじゃなくて周囲の子たちだって、葛藤して生きているのだから、とりあえず背負っておいてもよいのかもしれないと、私は少し開き直るようになった。

こうしてネガティブからの脱却作戦、第1ターンは無事完了したのである。

◎          ◎

第2ターンは、最近発掘したことである。昨年9月から大手配信サイトで配信されてきた男性アイドルグループの「新しい仲間探し」と題したオーディション。もうすでに計6次までのオーディションを経て、新メンバーが決定していて、メディアへの露出も増えるからますます目が離せない。

そして、どんなに辛く悩めることがあっても、夢中にさせてくれるのが「推し活」だということを、私はそのオーディションを通して再認識したのだ。

推しがいる生活は、どの時代も当たり前ではない。その生活は尊く、美しいもの。ごくたまに、推しを追っている自分が好きなんでしょ?と外野から冷めた目で見てくる人もいるが、たしかに推しに夢中になっているときの自分は、キラキラしているようで何事にもポジティブで居られるような気がする。

それと同時に、ネガティブな自分から卒業するきっかけにもなっている。そんな自分が好きだ、と胸を張って言えるのはまだ少し先のようには思うが、推しが生きるうえで追い風になっているのは確かなことだ。

また一つ、ネガティブな自分から卒業しようとした時間を武器に、これからもボチボチ頑張っていこうと思う。