いつの間にか杖を使わず坂を上ったあの景色、足の軽さ、一生忘れない

忘れもしない2001年7月。私は休みだったこともあり後輩と食事に出かけた。
たのしい食事が終わり家路に向かおうと自転車に乗るとポツポツ大粒の雨が、降ってきた。やめとけばよかったのに折りたたみの傘を広げ自転車にのりいつもの道を進んだ。
途中六叉路で青信号で横断歩道橋を渡っていた私は次の瞬間、左折してきた車に接触し宙を舞っていた。
少し動揺したがいつもどおり頭もしっかりしていたので立ち上がろうとしたが立ち上がれず、気づくと救急車の中。大腿骨骨折あすから当分入院と告げられその日から2カ月、私の入院生活がはじまった。
リハビリ、歩行練習、怠け者の私らしからぬ毎日を送り何とか退院にこぎつけたが、今までのようになかなか歩くことが出来ず杖に頼る生活がはじまり、私は笑顔が出来ない暗い人間になっていた。
そんな投げやりな私をみていた後輩が香港への旅行を提案してくれた。はじめは杖をついての旅行は抵抗があったが久々の旅行に出かけることにした。
怪我をするまでは1年に2回香港を訪れ、美味しいもの、人々の活気をかんじていた私。杖付きの旅行、はたして楽しめるのか後輩に迷惑かけてまで出かける所なのか、頭の中にずっとその思いがあった。
香港に到着し一番はじめに向かった先にセントラルの汕頭(スワトウ)屋がある。
坂を登っていると後輩が杖を使っていない私に気づく。汕頭屋さんは坂のてっぺん、あの景色、足の軽さ一生忘れない。やっぱり、香港に来て良かった。
私を笑顔にしてくれる場所、私が元気になれる場所、私が私らしくいられる場所。日本に帰るとまだ杖に頼る日々は続いたが以前のように明るく元気な私になっていた。
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