聞くのは転職よりも休職の話ばかり。人間を生かしてくれない社会で

私は今年の4月から社会人になる。大学院に通っていたため、社会人になるのが友人たちよりも2年遅かった。
今年の4月で友人たちは社会人3年目になる。しかし、友人の中にも休職をし、その後退職してしまった人がいる。それも、1人や2人ではないのだ。
「俺、休職することにしたわ」
こう発言したのは高校時代からの友人だった。友人はアルバイト先から正社員にならないか?と誘われ、その誘いを受け、飲食店の正社員として働いていた。
「アルバイトとは違って責任が問われる仕事だけどやりがいがある」と言っていた矢先だったので、なぜこのような状態になってしまったのか全く想像がつかなかった。
休職の二文字を口にしたあとに、友人は「弁護士を雇って戦うことにした」と私に言った。
なぜ弁護士???と呆然としている私に、友人は言葉を続けた。
最初はやりがいがあると思って仕事に取り組んでいたこと。
しかし、次第に上司からのパワーハラスメントがひどくなっていっていき、仕事が苦痛になったこと。
休憩時間を取ることができず、残業代も支払われなかったこと。
何とか続けようと思ったが、適応障害を発症してしまい、仕事ができる状態ではなくなってしまったこと。
そして、今後は弁護士を雇って支払われなかった残業代の請求をするために示談をする予定だということ。
淡々と友人は自分の状況を話していたが、私は少し混乱しながら友人の話を聞いていた。
休職するまで追い込まれる状況とは一体どういうものなのだろう。この飲食業の友人以外にも、残業が100時間を超える企業に勤めた友人も休職してしまった。
また、銀行員に勤めた他の友人も、周りの同期が次々と休職したことで残った同期が1人だけになってしまった。休職した同期はその後、退職してしまったらしい。しかし、退職後の同期の様子は全く分からない。音信不通になってしまったからだ。
こんな話ばかり聞いてしまうと、この社会は人間を生かしてくれないんだなと思ってしまう。
私の耳に入ってくる話は転職よりも、圧倒的に休職が多い。そして休職と退職を経て、音信不通のパターンがお決まりだ。友人が元気なのかも分からないし、生きているのかも分からない。
「若者の自殺が増えています!」というデータを目にするたびに、もしかしたら私の知り合いがこのデータに含まれているんじゃないかと不安になる。何処かで元気に生きてくれていたらと願う。
友人の様子が気になり、メッセージを送ったものの、ずっと未読のまま。「何かあったら相談に乗るよ」のメッセージに返信はない。
友人が社会人になるまで、私にとって休職という言葉は身近ではなかった。しかし、今となっては次から次へと休職する友人が増え、そのまま退職してしまっている。体調不良になって休職する友人も多く、体調が果たして治ったのかも定かではない。心が壊れてしまった友人もいる。
生きていてくれているのか、ただそれだけが気がかりではある。
「便りの無いのは良い便り」とも言うが、今はただ友人の無事を知りたいと願う。
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