「今の若いやつは弱い」不安定な現代社会、「問題」があるのは私たち?

社会人になってから、早くも7年が経とうとしている。自分が休職するまでは、休職ってもっと仰々しい、滅多にするものではない、珍しいものだと思っていた。
実は休職してるんだ。休職してたんだ。
身近で何度この言葉を聞いただろう。決して悪い意味ではなくて(自分も当事者だから)、こんなに居たんだと驚いた。
私自身、休職する、休職したと周囲に伝えるのは最初、勇気が必要だった。だって、何を言われるかわからないし、どう思われるかわからないし。社会人的には、一度ドロップアウトした弱い人間だろうか。逃げ出した、卑怯者だろうか。わかりやすい病気や家庭の事情ではなく、心の問題だったから。
でも意外と近くに、実は休職中、休職したという人がたくさんいた。友人や、友人のパート ナー、友人の職場の人……。
そして一方で、上の世代からはこうも聞く。今の若者は休職するやつが多い、すぐに心を病む、弱い、甘い。
確かに、私も多いなと感じた。休職ってもっとハードルが高くて、上の世代であまり休職しているイメージはなかった。でも、同年代にはこんなにもいる。どうしてだろう。本当に私を含めて若い人は心が弱いのだろうか。わたしたちに「問題」があるのだろうか。
ずっとそんなことを考えていて、最近ふと目に入って読んだ本がある。その本を読みながら考えた。
物価ばかりが上がっていって、増えない手取り。政治不信。自己責任論。SNS。上の世代よりも世界は便利になった一方で、私たちの悩みは増えた。
日々、SNSで発信される膨大な情報。その前までは、知り得なかった周りの情報が嫌というほど、目や耳に入ってくる。そして自分の生活と比較する。今までだって色々な人生があって、でも知り得なかった。比較対象が増え続け、それに比べて私は、今の仕事は、生活は……と私自身も、惨めになったり、落ち込んでしまうことが多々ある。そうなると、もっといい場所があるかも知れない、と今の人生に悲観的になってしまう。
おまけに経済情勢も良くなく、日々耳にする値上げや、政治家の裏金、不祥事、著名人の揚げ足取り、炎上。誰でも発信ができる一方で、匿名性を盾に言いたい放題。
現代人は余裕がなくなってきているという。確かに、思う節はある。私だって、自分の生活でいっぱいいっぱいだ。おまけに私たちは、少子高齢化の日本で、小さい頃から私たちが大人になったら、年金はもらえないかも知れない、若者が少ないから一人当たりの負担額はどんどん増えていくと教えられている。前職では、銀行員が会社にきて、企業型のIDECOの入会が勧められた。私たち若者は、自分でお金をなんとかしなければならない。将来、お金への漠然とした不安を常に感じながら生活している。
数年後に定年になり、退職金がしっかりと入り、少ないながらも、まだもらえる大凡の年金も分かっているおじさん達とは、生きている世界が違いすぎる。
それを、まるで自分たちの時はああだった、こうだった、今の若者は弱い、すぐに休職する、なんでもハラスメントという、というように判断するには時期尚早ではないか。誰しも自分の時代しか生きていないわけで、他の世代の人たちのことは想像するしかないのだ。その凝り固まった想像力を膨らませて欲しい。
一方で、昔よりも社会全体的に心の病についての理解や認知が僅かながらに広がり、昔よりも言い出しやすくなったということもあるかもしれない。私の周囲で見られるように、実は意外と身近で、誰が患ってもおかしくないという認識が広まってきた。だから、昔と比べて休職者も増えた。
考えても想像してみても、わからないこともあるけれど、でも自分も当事者として考えたい。休職しなくても済む人がいるのであれば予防は出来ないか。大前提として休職は必要な制度。いざ休職したいとなった時や休職後の周囲の理解も必要だ。
弱いから休職するのか。休職した人は、弱い人なのか。こんな不安定な世の中で、自分がいつ当事者になるかもわからないのだ。次はあなたかもしれない。その時に、社会は、会社はどうあって欲しいだろう。
私は、そういう時もあるよねと理解される世の中であって欲しい。と、常々思う。
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