「わたし、月曜日も仕事休みなんです!!!!私だけ3連休なんです!!!!」

そう、乗り合わせた人一人一人に声をかけて宣言したい気持ちにかられた。金曜日の退勤後の電車でのことである。すべての社会人が1週間待ち焦がれる土日休み。なんと私は来る月曜日に有休を取得したため、土‐日‐月の3連休なのである。

どれだけこの日を待ちわびたか。心のカレンダーに、赤い太ペンで何重にも丸をつけたほどである。休みを迎える前日の金曜日など、そわそわして浮足立ち、在宅勤務の仕事に集中できなかったほどである。なぜこれほどまでに有休が楽しみなのか。それを説明するには、1年前の休職期間にさかのぼる必要がある。

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昨年の6月から、私は持病の精神疾患を悪化させて4か月休職した。社会人2年目だった私は、もう新人ではない2年目であることからの周囲の期待とプレッシャーの高まりであったり、初めて迎える繁忙期の業務量であったり、業務の難化であったり、職場での人間関係に悩みんでいた。起きて涙と溜息と憂鬱な気分が止まらず、次第に心の調子の悪化に比例して、持病である潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群の症状だけでなく、椎間板ヘルニアや突発性難聴まで発症し、身も心も文字通り満身創痍であった。限界であった。

4か月間の休みでは、閉鎖病棟に入院したりもしたが、基本的には家でぼーっとしていた。否、ぼーっとしているように見せていた。でも、心の中では、休む時間にも限らず常に葛藤していた。休職期間中に勉強しなければ、資格でも取らなければ、とTOEICの勉強をしてみたり。復職したときのために少しでも役に立てるように、とビジネス本を読み漁ったり。そもそも本当に復職できるのか、同じ職場に戻ってもまた再発するだけなのではと怯えてみたり。使えなくて根性のない人間だな、とどうせ思われているんだろうなと悲しくなったり。「休み」という言葉がイメージするのびのび・ゆったりした気分とはかけ離れていたそわそわとした心境であった。休みは休みでも、「宿題を全く終えていないのに迎えた8月31日」が「毎日続いているような気分」と言えばイメージがつきやすいだろうか。休みでも、全く気は休まらなかったのだ。

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そうこうするうちに10月に復職した。休職する際に有休は全て消化していたため、手持ちの有休はゼロ。上司からは「体調優先で本当に無理しないで。体調悪いときとか、通院するときは欠勤でいいから」と声をかけてもらった。10月から3月まで有休はなく、休みたいときは休んでよい、ということで欠勤扱いとなった。大前提として、理解のある上司と福利厚生に恵まれた職場環境である。恵まれていることを承知で、石を投げられる覚悟で言うが、しかしこの欠勤というシステムが、非常にストレスフルであった。

体調が悪い時は欠勤ということは、計画的に休みがとれないということである。朝起きてどうしても調子が悪く、「ああ今日無理だ」となるときがどうしても、ある。そんなときは上司に「調子が悪いのでお休みを頂きたいです。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」とメールを打ち、罪悪感と焦燥感で再び床につく。そこに休みに本来あるべきワクワク感や解放感は皆無である。今、「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」とタイプして、そのタイプの流暢さに自分自身でびっくりしている。この1年間で休みを取る度に「ご迷惑をおかけ」し、「大変申し訳なく」思うのは、いつの間にか私の日常となっていった。

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月に1度の通院も同様である。有休でなく、欠勤の午後休を取得し通院する際に、仕事を抜けるときも、私は「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」を繰り返してた。そんな欠勤の日は、遊ぶことや息抜きすることなど恐れ多く、「ああまた迷惑をかけてしまった」とうなだれているうちに日が暮れる。欠勤は休みとは似て非なるそれであった。

そして今年度に入った。無事有休は復活した。4月は繁忙期で忙しく有休を取得することもなかったが、こうして迎えたのが、今回の3連休である。私にとって体調不良でもなければ、通院でもなく、欠勤でもなければ、勿論休職でもない、1年ぶりの「休みのための休み」である。そこに罪悪感と焦燥感はなく、こんなにも有休とはワクワクし、解放感を味わえるものなのか、とその威力に驚くばかりである。それもこれも、少しの波はあるものの、体調管理が上手くいき、ある程度の健康の上に立つ「計画性」があるおかげである。健康第一とはよく言ったものである。健全な体と安定した心理状態のもとに、健全な休みは成り立つのだ。

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日曜日の夕方になると明日からの仕事を考え憂鬱になる、いわゆる「サザエさん症候群」は有名だ。極端な「サザエさん症候群」、つまり「過激派サザエさん症候群」な私は、いつもなら土曜日の夜からすでに憂鬱になってしまう。しかし、どうだ。エッセイを書いている今、日曜日am10:18、私は鼻歌など歌いながら、片手間で明日月曜日の午前訪れる予定のルーヴル美術館展「LOVE展」と、午後に訪れる予定の映画の予告編を見ている。因みに、昨日土曜日は、友人とさくらももこ展に訪れたあと、地元の親友が我が家に泊まりに来て夜通しおしゃべりを楽しみ、今夜は会社の同期と飲み会まである。ルンルンである。久々の休みに分かりやすく浮かれているのだ。土日は友達とにぎやかに、月曜日は1人でのびのびと楽しむ、そんなバランスのとり方も、大人の休みって感じでなんかいい。

理想のオフの過ごし方。それは、この1年間で様々な「休み」を経験してきた私は、よく理解していることだ。健康で、罪悪感なくのびのびと。そんな心境で迎える土日はどんな過ごし方をしたって最高だろう。けれど、ここで最後にもう一度だけ自慢するのを許してほしい。「私月曜日も仕事休みなんです!!!!」