最近とある講演会を聞いた。そこで、文章を入れることで、その文章を再現する動画を作り出す生成AIがあることを知った。個人でも簡単に利用できることから、ハリウッドも戦々恐々としているとのことだ。

講演会で、実際に作られた動画を見せてもらった。「人が笑いながら最後は泣く」という文章を入れる。すると、動画の中のAIによって作り出された人物が、俳優さながらの名演技をした。文章でうまく書けないが、少なくとも私が演技するよりずっと上手かった。想像以上のクオリティに驚きを隠せない。AIもここまで進歩したかと感心してしまった。

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このAIの存在を知って、私はふとあることを思い立った。それは、自分の書いている小説を映像化できるのではないかということだ。

私は趣味で小説を書いている。もちろん出来は素人で、人様に見せられるようなクオリティではない。ただ、小説を生み出すうえで、一つだけこだわりを持って作り出している。それは小説の書き方だ。

私は物語を生み出す時、まず映像から思い浮かべているのだ。至って簡単な作業だ。

頭の中に舞台を用意する。そこに人を配置する。

女性?男性?
何時くらい?
主人公の過去は?友人は?

そんなことを考えているうちに、ふと、映像としてシーンが浮かび、セリフを言ったりなんかする。いわゆる妄想というやつだ。その妄想を丁寧に余すことなく文字として書き起こすことで、小説を作り出している。

そういった作業を繰り返していると、ある時名シーンが生まれることがある。作者の自分がいうのもなんだが、これは自分でも心を掴まれる、そんな内容だ。

そこで、その名シーンの配役を考えだす。あの俳優さんが良いな、いやこっちかな、といった具合で、頭の中で妄想をして楽しむ。

「いつか本当に映画化のオファーが来たりして!!」なんて叶わぬ夢を描く。

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実際に映像にしてみたいが私には映画を個人で作る能力も財力もない。それなら絵を書いてみるか、とも思ったが、残念なことに私はとんでもなく画力がない。せっかく人と共有したい名シーンなのに残念。文章で読者にうまく伝えられるだろうかとふと不安になる。

そんな時に知ったのがこの生成AIだ。ハリウッド映画ばりの動画を作れるAIなんて、まさに私が今欲していたものだ。このAIを使って、頭の中に浮かんだ風景、緊張感、表情や心の揺れを映像にしてみたい。きっと私が演じるよりずっと良い演技をAIはうみだしてくれるだろう。

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最近はAI技術の発展が一昔前に比べてものすごいことになっているが、そのせいで法整備をはじめ色々なことが追いついていない。まだAIには問題点もたくさんあると思う。著作権だったり、人間の存在する意義が曖昧になるといった哲学的な意味だったり、人が頭を使わなくなったり。会社でもデータが取られないよう細心の注意を払うように厳命されている。

それでもそんな不安を上回る力がAIにはある。技術があることで新しい世界に我々は一歩踏み出すことができると私は思うのだ。

やっぱり、AIのある世界は面白い。