愛おしく、美しい雨に見惚れた。インドネシア・ウブドの森の中で

念願叶って降り立ったインドネシア・バリ島。空港を出ると、ものすごい数の車とバイクが我々を出迎えた。
ビーチリゾートであるスミニャックを楽しんだ後、内陸地ウブドに移動した。スミニャックとは打って変わって、豊かな森に囲まれたウブドは、観光地としての賑わいの中に、伝統的で厳かな雰囲気が漂っていた。日本でいうところの京都のような感じだろうか。その日は繁華街を抜けた少し先、田畑の中に佇むホテルに宿泊した。
朝起きると、雨が降っていた。部屋の周りに生い茂る、見たこともない色や形の熱帯植物が、雨によって一層艶やかさを増し、静寂と雨音がホテル全体を包み込んでいた。私はテラスに出た。なぜだろう、驚くほどに心地が良かった。旅先での天候不良なんて気分が落ち込んで当然なはずなのに、いつまでもソファーに座って、この空気の中に漂っていたいと強く思った。雨で予定が中止になったことなどどうでもいいと思えるほどに。こんなにも雨を愛おしく、美しく感じたのは生まれて初めてだった。
人がどんなに苦労して創造したものでも、自然が生み出したありのままの美しさには到底敵わない。ウブドの森の中で、人間のちっぽけさと自然の偉大さを全身で受け止めた。価値観が変わるというより、改めて思い知らされる、記憶に残る旅だった。
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