今年の年明け、久しぶりに学生時代の友人とモーニングをした。3年ぶりの再会だった。
彼女とは高校のときに出会い、その後も同じ大学の同じ学部学科へ進学した仲だ。

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とくに、高校1年生の頃はクラスも部活も違うのにも拘らず、放課後や週末には近くの図書館で一緒に勉強した。入学直後の試験で自分たちの成績の悪さに愕然とした焦りもあったが、最大の目的はクラスメイトになるため。

私たちが通っていたのは進学校だった。大半の生徒が大学進学を目指す。

2年生に進級するとクラスが文系と理系に分かれる。なかでも文系、理系それぞれに1クラスだけ「特別クラス」が設けられる。通称「特クラ(とっくら)」と呼ばれていた。

特クラは成績上位の生徒、かつ大学進学を目指す希望者だけが入れる仕組みだ。その仕組みを知った友人と私はクラスメイトになることを目標に、文系の特クラを目指した。コツコツと努力を積み重ねた結果、2年生、3年生では夢のクラスメイトになった。

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親友と呼べるほど親しい仲だったが、友人と私との決定的な違いは性格や価値観だった。

友人は何事にも「安定」を求めるタイプ。必要以上の挑戦を望まない。恋人とは四六時中一緒に過ごしたいし、遠距離恋愛なんて論外。早く結婚して家庭に入ることが人生最大の夢というような生き方をしていた。

一方、私は「刺激」を求めるタイプ。現状の自分に見合わない無謀な挑戦だとしてもまずは立ち向かいたい。身近な人よりも遠い人に惹かれる性質があり、恋人とは遠距離恋愛でも構わない。むしろ恋人と会えない時間は自分のことに没頭できるチャンスだと捉えていた。

「安定」と「刺激」。私たちが人生に求めるものはこんなに正反対だったけれど、違いを受け入れながら友人関係を続けてきた。いや、違うからこそ私たちは仲良かったのかもしれない。

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アラサーに突入した頃、私たちはお互いが驚くような結婚をした。学生時代、友人が求めていた「安定」的な相手、私が求めていた「刺激」的な相手ではなかったからだ。
私たちは現在結婚生活それぞれの月日が経ち、その間子宝にも恵まれた。家庭をもち、子どもを育てる母である。会っていない3年もの間で私たちはそれぞれ変化していた。近況報告をし合っているなかで友人の現在の生活に驚かされた。

結婚生活2年目以降、夫は仕事の都合で単身赴任をし、月に数日だけ家族全員で過ごしているという。また、生活費や教育資金の捻出、住宅ローンの返済などで友人も家計を支える柱としてワンオペ育児をしながら週5日、正職員として仕事を続けているようだ。

「恋人とはずっと一緒にいないと生きていけないような私が、こんな人生を送るなんて自分でも信じられない。でも、これが私の人生だし、『自立しなさい』って神様から与えてもらった試練なんだと思う。学生時代の理想とはかけ離れているけれど、今幸せだよ」

そう言葉にする友人がかっこよくて、強さを感じた。その強さは、ひとりの女性として。

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彼女をみていると、人は何度でも生まれ変わることができるし、さまざまな要因が人を強くしてくれると心から思う。

現在、私たちは遠く離れて暮らしている。私が帰省したときには連絡しよう。お互いの「アップデートしたこと」と「変わらないわたし」を確かめ合うために。