カナダ旅行最終日、本当はもう一度「楽しかったね」と言いたかった

大学2年生の春休みに初めて1人でイギリスへ旅行して以来、1人海外旅行が趣味となった私。
日本という国も、誰かと行動することも好きだが、1人でのんびり、ゆったりと深呼吸をしたいと思う時がある。家族や友人とも距離を置き、身体の空気を入れ替える時間が私には必要なのだ。
今年はどこに行こうかと考えていたところ、兄から家族全員でカナダ旅行をしないかと提案があった。両親が元気なうちに、もう一度全員でカナダの思い出の地を巡りたいと。私の両親は日本人だが、兄も私もカナダで生まれ、幼少期はカナダで過ごした。
私は「絶対喧嘩する…」と兄の提案に後ろ向きだったが、そういえば最後に家族全員で旅行したのはいつだったか。思い出せない。還暦越えの両親の老いを感じる今、確かに家族で懐かしの地を巡るのもいい。そして、これが両親にとって、カナダ旅行をする最後のチャンスなのかもと思い、兄の提案に乗った。
宿泊先の手配やどこを巡るか、思いの外スムーズに決まった。旅行中も多少トラブルがありつつも、笑顔になる時が多かった。かつてよく行ったスーパーやレストラン、観光地を巡り、両親も興奮していた。ただ、常に誰かといる状況に私は疲れも感じた。1人になりたい…とため息が出たのも事実。複雑な気持ちだった。
しかし、旅行最終日、いつも以上に帰りたくない気持ちが強く、家族とも離れたくないと思った。1人きりになれなくて疲れてたのに…。寂しさを悟られたくなくて、日本に着いてからはあっさりと「じゃ、私はこの電車だから」と別れたのだが、本当はもう一度「楽しかったね」と言いたかった。言おうとすると、込み上げてくるものがあった。
この旅行が私にくれたもの。それは、我が家の強い絆の再認識と、新たな思い出。“この旅行” にとても感謝している。
とはいえ、やはり私には1人の時間も必要なので、1人の時間と大切な人との時間、うまくバランスをとりながら過ごしていきたい。
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