「若い女の子は人に頼れていいね」偏見をぶつけるというストレス発散

「若い女の子は人に頼れていいね。一人じゃ何もできなくても何とかなるし」
取引先の社員との会話中、私に向けて発せられた一言。その瞬間、自分の意識がピシッと凍りついたのを今でも痛い程強く覚えています。
当時の私はその会社に入社し約半年が経とうとしていましたが、日々新しく覚える事の連続ではあるものの少しずつ業務にも慣れ、自分の仕事に対しやりがいを見出していました。
任せてもらえる案件も増えていく傾向にあったそんな矢先、とある会社に打ち合わせという名目で自分の上司と共に赴く機会があったのです。
その会社は最近受注したばかりの新規の取引先であり、客先の担当者はこちらにとって不利益な、かつ難しい提案をしてくる少々クセのある男性でした。
当時私の行っていた仕事は個人だけでなく、他部署との連携がかなり重要になってくるものであり、何か一つの事を決める場合も単体で決断をすぐに下す事ができませんでした。
それに加え新規の受注先であり、会社の特色、傾向等右も左も分からない状態であったため、中々スムーズに話し合いを進める事ができなかったのです。
私も業務に少し慣れてきたとはいえ、大事な所は上司に一つ一つ確認しなければ不安で進められず、時に誤った認識をしてしまう事もあったため、それに対しその担当者は少々不信感を抱いたのでしょう。
打ち合わせをしている際も会話の端々にこちらの様子を窺う、少し皮肉めいたニュアンスを含んだ言い方をされましたが、打ち合わせも終盤に差し掛かった後に冒頭のような冷酷な一言が言い放たれたのでした。
「若い女の子は人に頼れていいね。一人じゃ何もできなくても何とかなるし」
半笑いになりながらこちらを小馬鹿にするかのようなその言い方に、私は背中がスッと冷たくなるのを感じました。そして、その直後にカッと顔に熱が押し寄せ、まだ打ち合わせは終わっていないにもかかわらず、頭が真っ白になってしまったのです。
確かに今の私は分からない事だらけで、ミスだってしてしまうし先輩に聞いたり助けてもらわなければならない事だって沢山ある。でもだからといって……どうしてそんな事を言われなければならないのだろう。
私だって自分なりに努力して、精一杯目の前の案件と向き合っているのに。
しかし相手がこちらにとってのお客様、立場が上である以上反論する事もできず、一緒に同席していた自分の上司も何ともいえない気まずそうな表情をしていました。
その後も打ち合わせは続きましたが、その時の会議内容はほとんど頭に入ってきませんでした。帰りの車の中で上司はあんなの気にする事ない、新規なんだし分からない事が多くて当然だ、と励ましてくれましたが、私の心の中の重いもやは一向に晴れる事がありませんでした。
正直、若い女だからといって同じような色メガネで見られ、差別的な発言をされた事は社会人経験を通して何度かあります。それは、今回のような仕事に関する事だけに限りません。
「若い子はチヤホヤされていいねぇ」
「媚び売っておけばすぐ助けてもらえるよね」
「どうせすぐ結婚して辞めちゃうんでしょ?」
などなど、周囲にいる人々の平均年齢が高く自分のような年齢の女性があまりいなかった事も相まって、色メガネで見られ、かつ発言をされた事が多々ありました。
その度に、どうして勝手にそんな偏見を持たれなければならないんだろう、と傷付く事もありましたが、今思えばそういう事を言ってくる相手はただ単に精神年齢が低く、器も小さいのだなぁと思うし、現在はその様な発言をされても割り切ることができるようになりました。
私に対し「一人じゃ何もできない」発言をした人も、こちらの立場が弱い事にかこつけて日頃のストレスをぶつけている様なものなのです。
こちらにも非があったとはいえど、ちゃんとした大人であれば、誰だって一人前になるまでの間に下積み期間があり、周りの助けを受けつつ少しずつ成長していくものである、という事を理解している筈なのです。かつては自分もそうであったように。
自分の経験を通し、色メガネとは勝手に偏見を持つ事によってそれを面白がり、かつ差別的な発言をする事によって日頃の鬱憤を発散させる、悪意のある物であると感じます。
人は日頃生きていると、ついパッと見で人を判断してしまったり、勝手な憶測を抱いてしまう事もありますが、私は他者を色メガネで見る事はせず、たとえ見られる事があったとしても決して怯まないそんな人間になりたいです。
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