「世界には色んな人がいてこそ楽しい」旅の思い出がお守りになった

学生の時、友人たちと約1ヶ月間ヨーロッパへ旅に出た。名所はほぼ見尽くし、涙が出るほど美味しいご飯も食べた。
お土産を買うとき、悩んだ。小分けにされたものを1箱買って配れば良いのに、あの子にはドイツ雑貨が似合いそうとか、あの子にはベルギーチョコが、とか。
考える時間は楽しいけれど、世界中のものがネットで手に入る今、お土産って何のために買うんだろうとも思った。
私が本当に日本に持って帰りたかったもの、それは写真にすら残っていない人々との出会いだった。
パリの日本文化会館でおにぎりを食べながら「セボン」と言ったマダム。コピー機の場所を尋ねると「何でも屋じゃないんだ」と怒鳴ったスペインのおじさん。「いつか日本に行きたい」と話していたケルン香水博物館の案内人。ベルギーのレストランで、お誕生日をお祝いされていたおばあちゃん。そして、そのおばあちゃんのスピーチを英訳してくれた隣の席の紳士。
生きていると人が嫌になる時がある。それでも私が腐らずにいられるのは「世界には色んな人がいてこそ楽しい」ことを、あの旅を経て知っているからだ。
期待していなかった出会いがもたらした思い出は美しいお土産になって、いつしか温かいお守りに変わっていた。
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