旅行とは、安定で平凡で退屈な私の人生において、たった一つの、いきがいである。

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物心ついた時から非常に心配性な性格であった。田舎の公務員の父親と専業主婦の母親のもとに生まれた私は、そこそこ勉強をし、そこそこの大学を卒業し、そこそこの企業に内定した。

心配性な性格なので人生のレールにいかに乗り続けるかを最重要課題とした。仕事も特に辛くもないが好きでもなく、淡々とこなしていく日々。安定とは、言い換えれば「慣れ」や「退屈」「平凡」とも言い換えられるかもしれない。

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旅行はそんなつまらない日々を、唯一刺激的でエキサイティングにしてくれるものだ。海外旅行が大好きな私は、観光や食事を楽しむだけでなく、現地の歴史ツアーに参加したり、文化体験に積極的に参加したりと、滞在時だけでもその国の人になり切ろうとする。

今までに体験したことのない価値観に触れ、平凡を抜け出し、自分をアップデートしていく。その過程は、楽しいなんてものではなく、とんでもなく魂を揺さぶられるような、自分が強く「生きている」という感覚を感じることができる。一種の麻薬みたいなものなのかもしれない。

旅行なしではもう、生きていけない。