夢のような「起床即出勤」も、最高とは言えず。理想のスタイルとは

「起床即出勤」
かつての私にとっては、まるで夢のような話だった。
通勤電車に揺られ、職場で顔を合わせ、仕事が終わればどこかに寄り道して帰る。
そんな日々が「働くこと」だと思っていたからだ。
私はコロナ前までイベント業界で働いていた。
イベントの準備や運営に奔走し、たくさんの人と関わる仕事だった。
それが当たり前だったし、仕事とはそういうものだと思っていた。
ところが、コロナ禍でその日常は一変した。イベントが次々と中止になり、私は職を失った。
そこから職業訓練を受け、Webメディアの仕事に就くことができた。
しかもリモートワークの仕事だった。最初は「本当に家にいて仕事をして、お金をもらえるの?」と信じられなかった。
パジャマのままパソコンに向かい、好きな音楽を流しながら仕事をする。
通勤時間はゼロで、満員電車のストレスもない。まさに「快適」そのものだった。
しかし、実際にリモートワークを続けてみると、理想と現実のギャップに気づくことになった。
リモートワークは確かに便利だ。しかし、私はこの働き方が「苦手」だと気づいた。
なぜなら、人とほとんど喋らなくなったからだ。
会議やチャットで最低限のコミュニケーションは取るものの、雑談する相手はいない。
オフィス勤務だった頃は、仕事の合間に同僚とおしゃべりをしたり、愚痴を言いあったりしていた。
ちょっとした会話が、日々の仕事の潤いになっていたのだと、今になって気づく。
リモートワークでは、朝起きて仕事をし、仕事が終わればそのまま家の中で過ごす。
外に出る必要がないから、1日誰とも話さない日も珍しくない。
そんな日々を過ごしていると、ふとした瞬間に孤独が襲ってくる。
同世代の友人が結婚し、子育てに忙しい様子をSNSで見るたびに、「私、このまま誰とも関わらずに年老いていくのかな」と不安になることもあった。
ただ、リモートワークになって良かったこともある。それは、「必要なものは意外と少ない」と気づけたことだ。
オフィスに通勤していた頃は、流行の服をチェックしたり、帰りにショッピングをしたりするのが当たり前だった。
しかし、リモートワークになってからは、服装を気にする機会も減り、不要な買い物が少なくなった。
周りに合わせるための消費ではなく、本当に必要なものだけを選ぶようになったのだ。「見栄を張る」という感覚も薄れた。
また、生活のリズムも変わった。
以前は仕事帰りに外食をすることが多かったが、今は自炊の時間が増えた。自分のために丁寧に食事を作ることで、心が満たされるようになった。
派手さはないけれど、シンプルな生活の中に小さな幸せを感じることが増えた。「足るを知る」という言葉が、今の私にはしっくりくる。
リモートワークには、メリットもデメリットもある。
通勤のストレスがなくなり、快適な環境で働けるのは確かだ。
でも、その一方で、人とのつながりが希薄になり、孤独を感じることもある。
「リモートワーク最高!」と言い切ることはできない。
でも、「この働き方だからこそ得られたもの」も確かにある。
私は今、自分にとってのちょうどいいバランスを模索している。週に何日かは外に出て、カフェで仕事をしたり、友人と会う時間を作ったり。
リモートワークをただの「引きこもり生活」にしないための工夫を続けている。
結局のところ、大切なのは「どんな働き方を選ぶか」ではなく、「どう働き、どう生きるか」なのかもしれない。リモートワークは、自由と孤独が表裏一体の働き方。
でも、その中で自分に合ったスタイルを見つけていければ、それは決して悪くない選択なのかもしれない。
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