「女性」は武器になるからこそ「あなただから」と言われたい

私が初めて尊敬する女性に接したのは米国だった。高校生でホームステイした時の経験ではあるが、その女性は世界でも名の知れる大手メーカー勤務であり、その本社で個室をもらうような管理職だった。
彼女は2人の子供を育てており、産休育休ももちろん十分取っていたが、育休明けのタイミングで昇進し、今のポジションになったと教えてくれた。広大な敷地内にある託児所に子供を預けて、ある程度仕事が終わった夕方にはお迎えに行って家で掃除や洗濯、子育てをするお母さんに戻っていた。旦那さんは彼女の育休明けと交代して1年ほどの育休を取ったと記憶している。
これを言えば海外のダイバーシティの状況と日本は違うから彼女はそのように働けているんだと言われる気がする。正直当時は、海外は違うな、日本も制度が変わればいいかもな、という軽い考えしかなかった。
しかし、いま社会人になり、その考えは変わった。
私が尊敬する女性はプライベートをハンデだと感じさせないし、それなりのポジションについている。
まず、税理士、弁護士、通関士など、性別で文句を言わせない国家資格を持っているか、英語はもとよりそれ以外に特殊言語が堪能、MBAなども経た地頭の良さがあるなど、いずれにしても手に職に近く、時短などの働き方による制約があったとしても組織の力になって欲しいという、人から求められる十分な能力を持っている。
それでもって、3人くらいのお子さんを立派に育てていたりする。仕事もプライベートも本人としては完璧ではないと謙遜する人も多いが、短時間でのパフォーマンスが高く、バランスをとってうまくこなしていて純粋にすごいと側から見ていると思う。
女性活躍推進で力不足の女性が管理職、経営者など、マネジメントにつくことが増えているというやっかみも時折聞こえてくるが、組織は上手くできているもので、本当に仕事ができる人がやはり残って、力不足の人は男女問わず淘汰されているのが現実だ。
私の見てきて尊敬する女性は、女性だから、子育てしているから、ということを言い訳としない。むしろ自分が女性であることで周囲に求められていることを自分で実現したいことに取り込み、大いに武器として前向きにキャリアを歩んでいるように見える。例えば、女性の課題を解決するような事業を展開したり、あえて女性の少ない分野で活躍することで珍しさを売りにアイコンとして活躍して、「女性」をうまくその人の武器の一つにしている。
そして、「女性なのに」すごいという人はいない。仮にその方が男性だったとしてもすごいと思う人ばかりだ。例えば、女性起業家をすごいとは言っても、そもそも自分自身が起業の勇気が持てないので、男性起業家でも同じくらいすごいと思っている。
冒頭の米国で会った女性は「女性なのに」すごかったのではない。産休明けで個室がもらえているとて、翌年も同じポジションでいられる保証はない。家庭環境を言い訳にできない、業績評価と純粋に戦いながら、元々のスキルに加えて子育ての経験、母親の視点でわかったことを商品開発にフィードバックできることが自分の強みだと奮闘していた。「その人だからこそ」尊敬できてかっこよかったのだ。
「女性」という武器は何もない人にとってはただの性別だ。男女問わず尊敬される能力とスキルをこれからも磨き続け、「女性なのに」ではなく、「女性だからこそ」「あなただからこそ」と言われる女性になるのが私の目標である。
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