女友だちに"彼女"ができた。何気なく使ってきた言葉を封印した

「えっ、彼氏のこと、"恋人"って言ってるの?」
私が自分の"彼氏"を"恋人"と呼んでいると分かると、驚かれることがよくあります。恋人という言葉が、古風に聞こえるせいかもしれません。けれど、どんな性別にも使えるこの単語は、私の中では、むしろ新しく取り入れたものなのです。
遡ること、7年前。6年間の女子校生活を終えた私は、大学に進学しました。同級生たちも、ほとんどが大学、それも共学に進学しました。すると、これまではほとんど話題にあがることのなかった"彼氏"に関する話が交わされるようになりました。同じように6年も女子校に通ったのに、もう"彼氏"ができた子がいるとか、いないとか。未知への憧れもちょっぴり抱えつつ、そんな話に花を咲かせることが増えたのです。
大学に入ってからしばらく経った、ある時。友人が、共通の友人である同級生の名前を出して、さらりと言いました。
「◯◯に、"彼女"できたってさ」
軽い衝撃を受けました。女友だちに、"彼女"ができたことに対する驚きも、なかったと言えば嘘になります。でも、その友人のことをよく知っているからこそ、大きな驚きはありませんでした。それに、そう私に伝えてきた子も、秘密を話す風ではなく、非常にフラットにその事実を伝えてきたのです。私の友人に彼女ができたことは、私にとっては、いたって普通のことでした。
だから、衝撃のほとんどは、自分自身に対してでした。友だちがどんな性別の人と付き合うのか、最初から決めつけるような言い方をしていた。そのことに、驚いたのです。
もし、"彼女"ができた友だちと、"彼女"ができたという前情報なしに話していたら。きっといつか、私は友人に、「◯◯は、彼氏できた?」と聞いていたでしょう。私は何も、友人が付き合うべき相手は、男性であるべきだとは思っていません。でも、聞く時点で性別を限定してしまっている以上、「あなたは、当然男の子と付き合うんだろうけど」と決めつけているも同然の行為ではないか、と思ったのです。
もしかしたら、私の何気ない一言が、悪意などゼロのまま、友人を傷つけていたかもしれない。
そう気づいた時、私は、心に決めました。今後、恋愛関係を話す時、相手の性別を決めるような呼び方をするのはやめよう、と。
そうしてたどり着いたのが、"恋人"という呼び方でした。私は、誰かに対して聞く時も、自分のことを話す時も、"彼氏"や"彼女"ではなく、"恋人"という言葉を使います。そうすれば、付き合う相手の性別を決めつけずに済みますし、たとえ相手の性別が途中で変わるようなことがあったとしても、性別を決めるのに違和感のある人と付き合ったとしても、その相手を"彼氏"と呼ぶか"彼女"と呼ぶかで頭を悩ませる必要はなくなります。どんな人にも使える単語なのですから。
性別など関係なく、私はただ、恋をしているかどうかを聞きたいだけ、恋の相手について聞きたい·話したいだけ。その性別について"こうあるべき"という考えを私は持っていないのです。でも、「あなたは、どんな性別の人と付き合ってもいいし、あなたも、どんな性別として生きてもいい」なんて、普通の会話では、友だちに伝える機会はないでしょう。それなら、何気なく使う言葉から変えればいいと思ったのです。
「彼氏のこと、"恋人"って呼ぶ人、初めて見た」
そう驚かれるたび、私はここに書いたような話を伝えます。人によっては、「そんなこと考えたこともなかった」と言いますし、「確かに。私も"彼女"とか"彼氏"とか言うのやめようかな」と言ってくれる子もいます。
もちろん、私の考えを押しつけるつもりはありません。性別に対してどんな考えをもつかもまた、他人を傷つけない限りは自由だと思うからです。
でも、無意識に誰かを傷つけるかもしれない、という感覚を忘れたくはないと思います。私自身もそうですが、ほとんどの場合、言葉は無意識に使うものです。けれど、意識的に話さなかったからといって、それを、誰かを傷つけた時の言いわけにしてはいけないと思うのです。
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