セクハラを許す免罪符?課題山積のアダルト業界に飛び込んでよかった

「アダルト業界で働いているということは、エロいんでしょ?」
お酒の有無を問わず、年齢を問わず、今までに数えきれないくらいこの質問を受けた。
いや、質問ではない。
疑問符はついているが平叙文に近いと感じる。
なぜならそのあとの私のリアクションなど待っておらず、私はエロいと決め込んだ質問が続くからだ。
いままでどんな性行為をしてきたのか、サディストなのかマゾヒストなのか…。
いまが令和だとは思えないセクハラ発言が続く続く。
こちらがどのような受け答えをして、あくまでも仕事に関わる話題へ戻そうとしても、直ぐにプライベートな話題になる。
聞いてもいなくてもセクシャルな体験談を聞かされたり、身体を触られたり。
そうか、アダルト業界に属しているという事実が、セクハラを許す免罪符になると思っているのかと学んだ。
社内でも、仕事の関連上、男性性器を女性性器に挿入するシーンを話すことがある。
その事象は、人が眠くなったために布団に入ることと、ある文脈では大差ない。
私も仕事の中ではその文脈で理解し、それ以上の意味は持たないと認識している。
しかし一度、「女性だからって(性行為の話をすることに)気を使わないよ」と言われたことがある。
そうか、女性であれば性関連の話は避けるべきだけど、男性同士ならいいと思っているのかと学んだ。
そして、性別がそうした話題を避ける理由となり、性別を抜かせば問題ないと思っていることもわかった。
私は教員として働いていたとき、少しでも10年後を生きる子どもたちによりよい社会を生きてほしいという気持ちが年々強くなった。
だから大学院へジェンダーとセクシュアリティを学びに戻り、社会構造を見つめるために、修士号取得後は教育現場ではなくアダルト業界へ飛び込んだ。
性を商品として扱う側の内部に入り、私なりに性を純粋に考えることにした。
とりわけ、社内外を問わずセクハラ発言を躊躇いもなくする男性たちに子どもがいるとわかると、なんとも言えない気持ちになる。
それと同時にこの業界に入ってよかったと、心から思う。
課題が山積みだ。
この業界で働き始めてからいままで、在籍する部内の営業に女性は私ひとりで、その後の採用もなかった。
しかし、もしかしたらこの春に新しい営業が入る可能性があるとわかった。
そこで心にひとつ決めたことがある。
後輩ができたら、「こんなセクハラはあるけど、こんな業界だから……」という先輩にはならないということだ。
アダルト業界で働くことと、プライベートな性事情を聞かれることや性別によって判断されることは、全くもって因果関係はない。
いや、相関関係すらないということを伝えたいと思う。
業界が変われば何か変化が社会に起こるのではないか。
その仮説をもとに、まずは部署内から、そして会社への働きかけをしたい。
これが、私が修士論文の次に着手する壮大なプロジェクトである。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
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