期待に応える=安泰で幸せ。そう信じていた私が選んだ「辞める」こと

わたしは、心配性だ。
自分でも、「こんなこと考えてもしょうがない」とわかっている、0.1%起こるかどうかのリスクについて、延々と考えて不安になってしまう。だからわたしは昔から、不安を少しでも軽くするため、なるべく「リスクが少なく、未来の可能性が狭まらない選択肢」を選んできたように思う。
学生時代は、勉強を頑張った。優等生として、いい大学、いい会社に入り、敷かれたレールを素直に歩むことが自分の可能性を広げ、将来の自分を守ると信じて疑わなかった。そうしていわゆる大企業に入ったわたしは、入社早々に配属ガチャの洗礼を受け、ひよっこ社会人には到底抗えない、「組織」という力の大きさを知った。
社会情勢の影響もあり、しかたがなかった。それに、自分の本意ではなかったとはいえ、会社が力を入れる新規事業への配属。このままここで、望まれる結果を出していけば、出世コースに近づくのだろう。だけど、「やりたいこと」ではなく、「求められていること」を選んでいくことが、本当にわたしの望む人生なのだろうか? と、どうしてもこの先のビジョンが描けない自分がいた。
誰かの期待に応えていれば、将来は安泰で幸せだと、漠然と思っていた。だけど、わたしが盲目的に信じていたのは、「自分にとっての」幸せではないのかもしれない。悩んで、悩んで、最終的に部署異動を願い出て、組織の期待とは別の道を選んだ。人生で初めて、自分の意志を持って、「辞める」ことを選んだ瞬間だった。
人は、良くも悪くも慣れる生き物だ。たとえ現状に不満があったとしても、環境変化のストレスを天秤にかけたとき、変わらないことを選んでしまう。心理学では「コンフォートゾーン」と言うらしい。
幸い学生時代まで、お膳立てされたルートで満足に生きてきたわたしは、コンフォートゾーンを抜け出すことなど考えたこともなかった。誰かの期待からはみ出た外側に、何があるのか知ることすら怖かった。だけど、「もう辞めよう」と自分を許したあの日、そこには確かにはっきりとした意思があったし、安心を超えてでも守りたいビジョンがあったのだと思う。
それからわたしは本当の意味で、「自分にとっての幸せ」を考えて、思い切った行動ができるようになった。インターネットで見つけた、同業者が集まるランチ会に申し込んでみたり、このままでいいのか悩んで、キャリアスクールに自己投資したり。初めてのことに不安になりながらも、価値のある挑戦だと信じて飛び込んだ。
そして飛び込んだ先で、自分の可能性を広げる出会いがあった。ランチ会で出会ったご縁から、憧れていたWebライターを始めることができたし、キャリアスクールでは、一生ものの仲間に出会えた。
今までと同じように、心配性で繊細なわたしが根底にいることには変わりない。だけど、いつか訪れるであろう幸せを待っていただけだったわたしが、今の環境から一歩外へ踏み出したことで、未来が変わり始めた。そんな強さを、身につけることができたのだ。
わたしたちは、変化の多い時代を生きている。いくら不安になっても、これからの人生には、予想できないことがたくさん起こるだろう。「ずっとこのままでいたい」と思ったとしても、時は経ち、わたしたちは歳を取る。時間の流れに抗えない以上、「現状維持はゆるやかな衰退」なのだ。
だからわたしはこれからも、心配性な自分を乗り越えるために、小さな挑戦を続けていく。行動力こそが、今と未来の自分を守る最強の武器になると、知っているから。
わたしの輝かしい未来は、わたしが切り拓く。
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