五感で確かめる「住む場所」。妥協せず、私は探し続ける

住む場所を妥協するのは良くないと分かりながらも、私の今の住居はベストじゃない。自分らしくいられるか、安心できるか、刺激があるか、快適か。
住む場所は、自分の生き方そのものと密接に関わってくるって思ってる。
パリにいたら感性が磨かれそうだし、南国にいたらリラクシーになりそうだし、北欧にいたら家にこだわりそうだから。
だから私は、ちゃんと考えたいと思っている。この先、どこに住むか。どこで生きていくか。
田舎に対する憧れは、驚くほど私の中にはない。
緑の中でゆったりとした時間を過ごす休日、広い庭のある暮らし。そういう生活が美しいと思わないわけではないけれど、そこに自分の毎日があると想像ができないし、虫やら雑草やら、不便さを連想してしまってワクワクが湧いてこない。
かといって、東京が大好きかと聞かれると、それも少し違う。
たしかに便利だ。どこにでも電車で行けるし、歩けば美味しいご飯屋さんにすぐ出会える。みんなおしゃれで、刺激にあふれている。けれどふと一息つきたくて立ち寄ったカフェはどこも満席で、どこにも「ふぅ」と座れる空間がなくて、なんだか心に余白が持てない。
子供にもお年寄りにも優しくなくて、みんなせかせかしている。少し窮屈だ。優しさより、スピードと効率の街だと思う。
そんな私が、もうすぐ暮らすのがマレーシアのクアラルンプール。
2年前に初めて訪れたとき、「ここに住みたい!!」って強く思った。都会で、便利で、 なのに余裕がある。ショッピングモールには子どもの遊び場があって、家族連れの笑い声があって、人々は穏やかであたたかい。夜のナイトマーケットは活気に満ちていて、でも騒々しさや治安の不安はなく、人種関係なく若者が自由に笑っている姿が印象的だった。
都市でありながら緑も多くて、海も近くて、空間も人の心もぎゅうぎゅう詰めじゃない。せかせかしめいない。そこが好きだった。
東京ほどの清潔感はないかもしれないけれど、私は渋谷や新宿に特別な清潔さを感じたことはなかったし、それよりも「人が気持ちよく生きている」ことの方が、私には大切だった。
もうひとつ、私は港町が好きだ。
横浜で育って、みなとみらいの風景に何度も救われた。広い歩道、緑の数、どれだけ散歩しても飽きない風景。
「水に縁があるね」と占い師に言われたことがあるのに、海にはピンと来てなかった。でも港町と思うと、ワクワクできる。
浜辺で泳ぐより、海を眺めながら街の灯りを見るのが好き。魔女の宅急便のキキが選んだ街が好き。髪の毛が潮でベタつくのは嫌いだけど、海と都会が隣り合って存在するあの絶妙なバランスは私の心を癒してくれる。
私は、自分にとっての正解の「都会」を探している。
どこにいても仕事はできる時代になった今、自分がどこに住むかを、自分で決められる自由がある。その自由をちゃんと使って、選び取りたいと思っている。
今年、留学を終えたら、私はコペンハーゲンに訪れたいと思ってる。港町としての顔を持つその街が、自分にとっての“次の候補”かもしれないからだ。
住居は五感で確かめたい。自分の感性に素直でいたい。
この先どこに住むか。
それは「生活のしやすさ」だけでは決められない。
その土地にいる自分がどんな生き方をできるか。そんな想像を何度も繰り返しながら、私は私の“住む場所”を探し続けていくつもりだ。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
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