睡眠、食事。生に直結することを諦めながら、心の中で生きたいと叫んだ

夜、眠るのが怖かった。
目を瞑ってもなかなか寝れずに、頭の中ではひとり脳内反省会が行われる。シーンとした暗い部屋で、ただひとり。世界に私だけしかいないんじゃないか……って思うような、孤独感に苛まれて、頭の中だけがずっと騒がしい。そんなことを考えている内に、いつの間にか夜中になって、気持ちが落ちてしまう。毎日毎日、その繰り返しだった。
このまま、永遠に目が覚めなければ良いのに……と、何度願ったことだろう。朝が来るのが怖かった。また、今日も生きなければいけない。何もできないのに。何もしていないのに。涙さえ流せなくて、それなのに生きなくてはいけないその現実が残酷だった。朝日が、ものすごく眩しかった。
だから私は、眠ることを止めた。止めようとした事があった。朝が来るのが怖かったから、その現実から逃げたくて、夜を引き延ばして朝を遠ざけた。夜中の3時くらいに襲ってくるその眠気に、必死で抗っていた。ただ目を開けたまま、わざと泣ける本を読んで思いっきり泣いて、時間にしがみついていた。
それでも当たり前に朝は来て、その当たり前を恨んだ。誰かが亡くなっても、この世界は変わらないし、私が苦しくても嬉しくても、変わらず朝はやってくる。そんな当たり前なことに、当たり前だからこそ、抗いたかった。生きることが、どうしようもなくしんどい時に、朝が来ることは、私にとって地獄だった。どうして、みんなはあんなふうに普通に眠って、普通に朝を迎えられるんだろう。その普通が、その当たり前が、私には手の届かないもののように思えて、眩しかった。眩しくて、少しだけ寂しかった。
私の夜は、深くて、重たくて、いつだって底が無かった。どれだけ息を吸っても、ちゃんと肺に入っている感じがしなくて、酸素が足りない。布団にくるまっていても、体の内側がずっと震えていた。心臓がドクドクと動いているのは分かるのに、何も感じない。生きてる感覚だけが、痛みのように私を刺していた。夜中の3時。本を読み終えて、スマホの画面を見つめながら、なんとなく「消えたい」と検索する。私の検索履歴は誰にも見せられない。誰にも見せてはいけない。Yahoo知恵袋で同じような気持ちを持つ人を見つけては、泣いて、少しだけ安心して。安心したら、そのまま眠気に勝てずに少しだけ寝て、当たり前な顔をして学校へ行く。そんなことをずっと繰り返していた。
そんなことを繰り返していたら、片耳が聞こえなくなってしまった。それが、センター試験の一週間前だった。
色んなことに抗いながら、生きてきた。食べることが生きることに直結しているのだと聞けば、食べることを止めた。生に直結していることを諦めることで、人生を諦めているつもりだった。未来に希望が持てなかったから。それでも、多分、本当は生きたいと叫んでいた。心の中で静かにそっと。
そんな絶望を繰り返しながら、それでもしっかりと年を重ねた。眠れない夜がある。朝が来るのが怖い日もある。不安が消えたわけではないし、すべてがうまくいってるわけでもないけれど、目を覚ましてカーテンを開けると、光がちゃんとそこにある。隣に大切な人の寝顔がある。それだけで、少しだけ、呼吸がしやすい。思いっきり酸素を吸った。肺いっぱいに広がっていく感覚。大丈夫、今こうして生きている。私はちゃんと生きている。
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