己の執念深さにドン引き。ピザ屋の車に水をかけられたあの日を忘れない

好きなゲームのグッズがコンビニで発売されたそうだ。ついでに別の好きなゲームのキャラクターがデザインされたペットボトルホルダーが、コンビニ限定でペットボトル飲料のおまけとして配られているらしい。これはコンビニに行かねばなるまい。そう重い腰を上げた。
なぜ腰が重いかと言えば、私は滅多にコンビニに行かないからだ。売っている物が高く、スーパーに行きがちで、コピーくらいでしかコンビニに行かない。コンビニって何時から開いてるっけ?と家族に聞いたことがあるくらいには行き慣れていない。そんなわけで腰が重いのだ。
腰が重い理由はそれだけではない。天気が悪いからだ。季節は梅雨真っ盛り、曇天がデフォルト。そして今日は雨が降っている。しかも、けっこう強い。雨の中、歩くのは大変だ。だけど、早く行かねば売り切れごめんになってしまう。
そうして重い腰を上げ、私は家を出たのであった。傘を差しながら、まさしくエッホエッホと15分ほど歩いた。コンビニに着くと、目当ての品々はもうなかった。田舎なので徒歩でのコンビニ巡りは、雨の中では難しい。私はトボトボと帰路についた。半分ほど歩いた時、追い抜きざまに車に水を掛けられた。地元ピザチェーン店の車だった。雨降る中の片道徒歩15分は大変で、目当ての品々も買えず、挙げ句、車に水を掛けられた。散々である。
雨の中、頑張って歩いている私に水をかけた、なんだこいつは。そこまでは事実なので、ピザ屋の車への怒りもごもっともだろう。問題はここからだ。雨の中、頑張って歩いて報われなかったフラストレーションのようなものが怒りという形でプラスアルファされ、ピザ屋にぶつけられた。結果、「雨の中バイクで配達している配達員さんもいる中、なんだお前は車に乗って歩行者に水をかけて、ろくでもない、一生このお店ではピザ頼まないからな」という思考になった。そのピザ屋はみんな車で配達してるかもしれないのに、勝手に雨の中バイクで頑張って配達している配達員さんを作り上げて、謎の方向から怒っている。しかも他の配達員さんの味方に立っているかのようだが、一生ピザは頼まないと、他の配達員さんも巻き込まれる形になっている。
何この怒りの思考回路、と自分でも呆れた。このように想像力が妙に冴え渡る時があり、そういうので小説とか書けたらいいのにと言われることもあるくらいだ。私はエッセイしか書けないのだが。
もっと呆れるのはこの話が数年前の話なのに、未だに根に持っていることだ。このピザ屋の広告やチラシを見かける度、雨の中、頑張って歩いている私に水をかけたから絶対買わないと言ってる。なんという執念深さだろうか。自分で自分にドン引きである。許してあげなよと思う反面、水をかけるなんて許せないよねという気持ちもあるから厄介だ。
こんなに根に持つなら、ピザ屋に一報入れたら良かったのではなかろうか。あまり知られていないが、車が歩行者に水をかけるのは道路交通法で違反行為になっている。ドライバーが歩行者に水をかけた意識が薄いことも多く、被害の申し出も面倒なので罰金に繋がることは少ないのだが、お店の車やタクシーなど特定しやすい場合は、大元に一報入れると然るべき謝罪などがあるだろう。でも今、同じことがあっても面倒くささが勝り、何もせず怒りをこじらせるだけのような気がする。
面倒くさがって感情を適宜、適切に発散するなどしないと、こじらせて余計面倒なことになるのだろう。それは怒りに限ったことではないだろうが。そう分かっていても、難しいなと思う。そんな水に流せない自分の面倒臭さや執念深さを雨の日になると時々思い出す。
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