帰宅、帰宅、帰宅、帰宅、帰宅、仕事、帰宅。

突発的な調整事項に全集中で対応し、颯爽と帰宅する金曜夜。
炊飯器のスイッチを押し、小走りでスーパーへと向かう。
無駄のないコースで材料を購入、流れるように帰宅。
時間が少し遅くなりはしたものの許容範囲、概ね順調通り。
片栗粉をまぶした鶏もも肉を多めの油に投入した瞬間広がる香ばしい匂い。
チンっと音を立てるレンジを開けると濃厚な甘酸っぱい香りがもも肉と融合する。
たまらずプシュッと音を立てて開けるのはアルコール、ではなく炭酸ジュース。
家での1人飲みで寂しくなるより、炭酸ジュースで甘い夢を。
もりもりに盛られた白米と、甘酢タレに絡んだ大量の鶏もも肉。
惜しげもなくかけられたタルタルソースとのコントラストはもはやアカデミー賞。
今日だけは、今日この日だけは世界中の誰よりも金曜日を楽しんでいる。
2025年度、29歳春にして人生で初めての華金を楽しむ女、それが私だ。

◎          ◎

9時に出勤して17時に退勤。暦通りの休日。12時前後になればお腹が空く。
社会人6年目、一般的によく聞く社会人という型で働き始めて約2週間。
入社して5年間とは生活スタイルも業務も何もかもが異なる2週間。

一応5年間で培った知識を使用する場面はあれど、対局的に見れば全く異なるフィールドへと移行したわけだが、意外にも業務は楽しい。
ありがたいことに今年度は実業務として動く場面のほかに、会社全体で実施するプロジェクトの1つにおいてリーダーをさせていただけることになった。

高い山程燃える性格であることがバレているのだろう。
ご期待通り、従来を踏襲するなんて面白みもないことはやめる。
手のひらで踊らされているように手のひらを燃やしていこうだなんて画策している私。
始まったばかりの2025年度、自分の努力によっては大きく成長できる機会となるだろう。
そういう意味では私と会社の関係はずぶずぶだと言える。
昨年度まではその表現に間髪入れず首を縦に振っていただろう。

◎          ◎

しかし今年度は少し変化がある。
そこには休日と平日のメリハリがはっきりとついたという変化が影響していると言えるだろう。

昨年度は特に資格の勉強をしていたこともあり、平日と休日の境界が限りなく曖昧だった。
資格勉強という名目で休日に会社メールを開くことに躊躇はなく、ついでに一つ業務を終わらせてしまえ、なんてさっと仕事を片付けることもちらほら。
良くない事だと分かってはいたが、つい。
テレビで罪を犯した人間が使うような理由のようで少し聞き感触が悪いが、そのくらい休日と平日の境界が薄かった。

暦でもくっきり分かれた今年度、すでに金曜日が待ち遠しくて仕方がない。
前述した通り、新しい仕事は完全に慣れたわけではないが楽しくやれている。
しかし仕事のために生きているわけではない。
豊かな人生を生きるための一つとして仕事があるだけなのである。
これまではそれらのバランスをうまく保つことができなかった。
今年度は蔑ろにしていた分、全力で休日を楽しむ。
その中でも金曜夜はいわばテーマパークの入り口のようなもの、一番楽しくで高まる瞬間なのである。

◎          ◎

最後の一切れになったチキン南蛮を頬張りながら躊躇いなくスーパーカップを取り出す。
最初はスプーンで王道に。
少し柔らかくなってきたら冷やしていたブルボンのチョコスティック菓子につけて食べる。
すでにカンストしている幸福に包まれながら、熱々に張ったお湯へと浸かる。
文字に起こすのも恥ずかしいほどの野生的な感嘆詞が湯船の底へと落ちていく。
脱衣所から聞こえる最新アルバムを聴きながら、しっかり汗をかく。
火照った顔を沈静化させるのは今日に合わせて購入したスーパーパック。

時刻は午前0時過ぎ、これでもかと詰め込んだ金曜夜。
素晴らしい休日を迎えるための最高のスタートダッシュと言っても過言ではない。
自分の人生を豊かにする、ついでに会社でのパフォーマンスが上がる、こんな最高なことはない。
来週の金曜はどうしよう、そんなことを考えながらまた月曜から全力で生きる。