大学生の時に付き合っていた社会人の元彼。

彼と付き合っていた時、私は自分に自信が持てなかったし、好きになれなかった。

そして、責任転嫁するようだけど、それを助長させるかのように、彼の生活とのギャップや、距離や会える頻度が私のそういった気持ちを日に日に膨らませていった。

社会人の彼とは何もかもが違いすぎた。学歴も、生活リズムも、気持ちの余裕も、金銭感覚 も、会いたい頻度も、好きの度合いまでも。
常に嫌われないか不安で。好かれているか心配で。捨てられないか怯えて。会えなくて寂しくて。会えない時間を繋ぎ止めて埋めてくれるはずのLINEも、会話を続けようと必死な私に対して、彼はあまりまめではなくて、クールな感じだった。

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最初に好きになったのは私だけど、最終的に付き合うきっかけは彼からだったのにな。どうして私はこんなに寂しいのだろう。どうして私はこんなに自分に自信がないのだろう。

恋は盲目だ。彼に対しておかしいな?とか、もっと不満とか要望とか出して良いはずだったのに、私は自分が悪い、自分が我慢しなきゃと、感情を抑えていた。

その反動で、 久しぶりに会えた時は嬉しさが爆発する反面、終わりの時間は本当に辛かった。不満や不安を溜め込んでいた分、溢れ出すと止まらなかった。

そんな彼とのLINEで、いかに自分が彼に合わせようと必死で素直になれていないか、実感する場面があった。

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彼とは付き合う前からお互いの漫画を貸し借りしていた。彼から借りている漫画は面白くて今でも好きなのだけど。漫画の貸し借りを口実に会えるし、共通の話題が出来て嬉しかった。
ふと漫画の中の好きなキャラクターの話になり、このキャラがいい、あのキャラがいいと話していた時。漫画の中では、最初は地味な存在だけど、後半にかけてジワジワと存在感を示してくるようなキャラクターの1人を、彼は好きだと言っていた。

私はまだ読み始めたばかりだし、そのキャラクターについてそこまで気に留めてもいなかったのだけど、私もと言わんばかりに、「確かにこういうところが○○ですよね!」と返信すると、「無理に合わせなくていいよ」と彼が一言。

冷たく言われたわけでも、怒られたわけでもないのだけど、無意識に彼に無理やり合わせようとしている自分が恥ずかしくて、部屋で1人顔から火が出そうだった。

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寂しくても、平気なフリ。
すごく不安でも、ほんの少しだけ不安なフリ。
彼に好かれたい、彼に嫌われたくない一心で、あまりわがままも言わなかった。聞き分けのいいフリをしていた。
彼に会う日は、自分の細部まで気を遣った。服装、ムダ毛、香り、化粧。少しでも自分の嫌なところは見せたくなくて、必死に繕った。好きだと思われたくて、可愛いと言って欲しくて。

しかしあっけなく彼に別れを告げられ、涙は止まらないわ、食欲は出ないわで散々だった。とっくの前に、私自身も気持ちに限界を迎えていた。でも彼と一緒にいるとすぐ麻痺してしまう。当時、考えられる最悪の事態は、彼との別れだったから。あれは一種の依存だったのだと思う。

彼と付き合っていた間に違和感は沢山あった。だって、何度泣いたか分からない。彼との生活感は合わない気がしていた。でもどこかで、小さな小さな希望を抱いていた。このまま彼と続けていけたら、きっと彼はもっと私を好きに、大切に、変わってくれると。
結局それは間違いで。素の自分をほとんど出せていない時点で、明るい未来はなかった。気付くまでに(いや、受け止めるまでに)だいぶ時間がかかってしまった。

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でももう卒業したの、あの頃の自分から。

今一緒に住んでいるパートナーには、良くも悪くも家族よりも素を出せている。元彼との時と比較したら、女子力という意味ではだいぶ怠ってしまっているけれど。
それでも、あの時の自分よりも今の自分の方が断然好きだ。今の彼は頑固だし喧嘩もよくするけど、思ったことを言えるし、毎日可愛いと言ってくれる。ありのままの自分を出しても安心して居られる。

私はこれでいい。これがいい。
さよなら、元彼。
さよなら、あの頃の私。